愛の懺悔(小説)
アイノがまた同級生を裏切ったらしい。
アイノの野郎のやったことは許せない。
美人で、勉強もほどほどで、運動神経もいいアイノは、家も広くて、あたしみたいに欲張らなくていい育ちなんだね。
だから、わたしはアイノに報復として男たちからひどいことをさせるように仕向けた。
すっきりした。そして、わたしはアイノに顔向け出来なくなった。
アイノと同じ町にいるのが苦しくて、関東に逃げたよ。それでもすれ違うミディアムヘアの女たちがアイノに見えたり、ぶっきらぼうで足も大根みたいだった頃よりそれなりに垢抜けたわたしにストーカーしてくる奴らがアイノの手下なんじゃないかなって思ったり。落ち着きのない生活は続いてる。
あれから14年も経ったのにね。
恨まれてる証拠はないけど、先日、あたしのSNSにアイノの足跡があったよ。
ねえ、アイノ。あたしのこと恨んでるんでしょ?
じゃあ、早く殺しに来てよ。
勉強もバイトも頑張って、売りまがいのこととして学生時代は必死で、あんたみたいな必死さも欲張りもいらないようなノウノウと生きてる女がおなじ学校で同級生ってだけでイライラしてたんだよ。でも、しょうがなくないよね。あんたは悪くない。じゃあ、あたし悪いの?
頑張った甲斐もあって奨学金もいらず自費で国立大学に入った。在学中は留学や研究やアルバイトに明け暮れた。でも、恋愛だけはいつまで経ってもうまくいかないの。みんなあたしを一番には愛さないの。アイノは一番になれるタイプでしょ?それでいて、あたしみたいな下手に賢くて自力でやってける女より、よっぽど周りから助けてもらえるんだろうね。
アイノ、あたしはあんたより性格が悪い上に努力家なんだよね。だからってわけじゃないけど、家庭とか結婚とか子供はわたしの人生において諦めるべき項目なんだなって最近悟ったの。
子育てに割く労力を、自分のお仕事に費やせば、少しはあたしも役に立てる、、って言うか、あたしみたいな性格のオバケがもうひとりあたしの腹から生まれるって想像するだけで吐き気がするっていうだけなんだけどさ。
アイノ、うちらもう30歳になるんだよ?はやくあたしを恨んでるなら行動に移してみたらいいじゃん。あんたがあたしより先にもし死ぬつもりなら、あたし、どう生きていきゃいいかほんとに見失うんだから、絶対あたしのあとにしてよ?
ああ、あたしって、本当はこんな優しさ持ってたんだね。
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