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【短編小説】通り雨 最終話

 唐突の雨に私は身動きが取れないでいた。
閉店したお店の前で途方に暮れて立ちすくむ。
これから、友達と会う約束があるのに……。
お気に入りのブラウスを眺めてふとため息を吐いた。

「もしよければ、この傘使ってください。」

そんな声に誘われてふと顔を上げる。
そこには春のうららかな日差しのように優しく微笑む男子学生がいた。
ビニール傘を私のほうに手渡している。

「でも、いいんですか……?」

私はそう遠慮がちに言った。すると、その人は

「僕は折り畳み傘がありますから」

と笑って見せた。

雨が躊躇する私を急かすように勢いを増す。

それじゃあ……と私は傘を受け取って

「ありがとうございます」

といって友達のもとへ向かった。
なんとなく振り返ると男子学生はひどく寂しそうに雨空を眺めていた。
まるでなくした何かを探すように。


ふと、彼がこちらを見やったので私は軽く頭を下げてその場を去った。

 これは、ある春の日の出来事である。

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真昼ノ星
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