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【短編小説】チビと僕のくせの話 第一話

 まだ少し寒さの残る春の日のこと。僕はこたつで寝ころんでいた。一番暖かい真ん中の部分を避けるように大の字で。この癖はいつか抜けるのだろうか。それはそれで悲しい気がして僕はため息をついた。

 これは、夏が終わるころ。ひぐらしが寂し気に鳴き、向日葵がそっぽを向くころ。ただ突然告げられるのだ。
「あなたの余命は後半年……年を越せるか越せないか……」
無機質な白い部屋の中、白衣をまとった医者は淡々とそう告げた。


 気が付くと僕は病院を出ていた。気が動転してそれまで何をしていたのかは覚えていないが、今確かに冷たい意地悪な白い建物を出て、夏の空を仰いでいた。

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真昼ノ星
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