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【短編小説】チビと僕のくせの話 第三話

 次の日も僕はその公園の横を通る。昨日のことを思い出して少し公園を覗いた。
すると昨日と同じ、出入り口付近の芝生の上に子猫は横たわっていた。
柔らかく届く日差しのもと子猫は気持ちよさそうに目を閉じていた。よく見ようと公園に入ったところ音に反応して子猫が起きる。
ただ、ある程度の距離があるからか子猫は動かないでいた。そして、こちらを見て

「みー」

と鳴いた。
そのかすれた鳴き声は僕には近づくなと言っているように聞こえた。
小さくか弱い子猫の必死の抵抗。あまりに頼りなく、心配だった。
それでも僕にできることは何もない。明日もその場所で元気にしていてくれることを願って僕はその場を後にした。

 それからまた一日たった。僕はまた公園の片隅に目を向ける。
そこには昨日までのあの小さな形はなく、少し運命的に感じた子猫との出会いがやはり偶然だったと思い知らされ少し寂しくなった。
僕が子猫に惹かれたように子猫も僕を気に留めてくれていていつものその場所で待っているというようなことは寂しがりな自分の勝手な期待に過ぎないのだ。
ふっと息を吐き、曇天の中苦々しく笑う。振り向きざまに遠くのツツジの木の茂みが目に入る。その根元にだらりと力なく放り出された子猫の足が見えた。

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真昼ノ星
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