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【短編小説】暇人 第三話 (全八話)

 昔、昔あるところに握りこぶしほどの体に手足の生えた真っ赤な蟹と人間のつま先から膝小僧くらいの大きさの猿がおりました。
猿はこの辺りでは一番体が大きくいたるところでえばり散らしていて、この蟹も毎日のように邪魔だと言って蹴られていました。
ある日蟹が歩いているとまったくひどいものだと他の動物たちが語り合うのが聞こえてきました。
りすは僕は一所懸命集めた木の実を根こそぎ持っていかれたのさと言い、兎は耳をつかまれて宙ぶらりんにして振り回されたんだよぉとぐずりました。蜂は、蜂蜜を舐めとられ、小鳥は止まっていた枝をぽきっとおられたと言います。
皆はあんな奴嫌いだとささやきあいます。
蟹はその様子を眺めてこう思いました。

「猿は可哀そうなやつだなあ」と

 そんなある日、猿に思いきり蹴飛ばされた蟹は冷たい黒くとんがった岩に体をぶつけてしまいました。
岩の影に落ちた蟹の自慢の真っ赤な甲羅には大きなひびが入り、蟹は起き上がることもできなくなってしまいました。
神様はこの蟹のことを哀れに思い、蟹を起き上がらせ、甲羅のひびを治してあげました。
それから、蟹を掌にすくいあげるように持ち上げふうっと息を吹きかけると蟹はみるみる力が湧いてきました。
神様は、君に魔法の力を与えたんだと言いました。
蟹は鋏を振るだけで大きな岩を浮かび上がらせたり、怪我を癒してあげられるようになりました。

 それからというもの蟹は皆のヒーローになりました。
神様からもらった力を使って皆を助けていったからです。
猿は相変わらず意地悪をしていました。
しかし、蟹は猿にいじめられている人を助けはするものの……

「猿を痛めつけることはしませんでした」
   おしまい

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真昼ノ星
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