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視点を変えれば

当たり前の事を、当たり前だと分かっていなかった。
そんな自分に、衝撃を覚えた出来事だった。

あの日、何だか少し足を伸ばしてみたくなって、友達を誘って東京へ行った。

一緒に洋服を見たり、スイーツを食べたり、いかにも女のコらしい時間を心から楽しんで過ごしていた。

あちこちにはクリスマスの飾りがある。
もうそんな季節なのだなぁと、目から季節を感じとる。そう言えば、風も大分冷たくなってきていたっけと振り返る。

ふと、前に行ったスカイツリーから見た夜景を思い出した。宝石箱をひっくり返したような色とりどりの心に残る夜景だった。あの時もちょうどクリスマスだったっけ。
記憶に思いを馳せていると、昼間に展望台へ上ったことがないなぁと思い至った。

私は好奇心が抑えきれず、友達に一緒に行って欲しいと無理を言って、そのままスカイツリーへと向かう事にした。

スカイツリーの周りも、クリスマス一色と言っても過言では無い位の装飾でいっぱいだった。きっと、夜になったらそれはそれは綺麗なのだろう。去年と同じように。

チケットを買って、上へと向かう。
エレベーターを降りたそこには、まるで景色全てがミニチュアになってしまったかのような錯覚を覚える程の、小さな建物達が、川が、海が広がっていた。夜景の綺麗さとはまた違った趣きがある。

友達の住んでいるところや、見知った場所を探して移動していく。カフェに入り、綺麗なピンクを基調としたグラデーションのジュースを買って飲んだ。もちろん、他の友達に自慢するための写メは撮っておく。背景はミニチュアの街並み。うん、悪くない。
考えてみれば結構歩きっぱなしだったのだと、少し身体を休める為に座った。

この時点で少しずつ日が沈み始め、オレンジ色が青空に混ざり、溶け込んでいく。そして更に上の展望回廊へと向かうエレベーターに乗り、降りると、本格的に夕焼けが青空を侵食していっていた。

そして、そこも一周した頃、ある事に気がついた。
ある一線を境に、片方は夜景になり始め、もう片方はまだ夕陽が空を彩っていた。

衝撃だった。
空はいつでも同じぐらいに同じ色であると思っていた。夕陽の所だけ、染まっていると思っていた。

本当はちゃんと空の境界線があるのだと、本当に当たり前のはずの事を、頭と心が同時に理解した。
いや、させられた。

あまりの美しさに、衝撃が感動へと変わる。
もうそれこそ、言葉に出来ない想いが、身体中を駆け巡り、心を満たしていく。

それらを抱えたまま、下に降りた。
お土産を少しだけ買う。
前からストラップを探していたのだけれど、ピンとくるものが見つからなかったのだ。
おかしな言い方だけど、目が合った瞬間にキミがいい!と思える出会いがあった。私はストラップに恋でもしたのだろうか。

そして、外へと出る。
ここでも私は感動した。
クリスマスのイルミネーション。
ありきたりの感動だと思われても仕方がない。
けれど、感動の重ねがけをされた私の目に映るそれらは、いつものものではなく、新しい目線から見た新しい美しさを放っていた。
そこから、スカイツリーのライトアップも見える。
これもまた、いつもと違う。

ただ単に出かけた何気ない一日。
去年と違った自分をプレゼントされた時間。
そこで出会った出来事を、得たものを、私は忘れる事はないだろう。
一緒に行ってくれた、友達への感謝と共に。

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