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男女戦争
高い壁。
それは男女を隔てる壁で、こっち側が男であっち側が女の領域だ。
かつては、この壁は風呂屋の壁で、また便所の壁だったのかもしれない。それが今や……。高さだけじゃない。その長さは果てしがない。
「人手が増えるのは助かる。アキラといったな」
ディレクトリのリーダーのクロウさんは、俺の肩に触れて言った。
「はい。仕事を覚えたいので、なんでも言ってください」
「けけ。そんじゃあ、俺の夜伽の相手をしてくれよ。お前みたいな面ぁ嫌いじゃないぜ」
同行していたトノマが、ニヤケ顔で言った。まったく、男ってのはどいつもこいつも。
「ああいいぜ。お前がしゃぶってくれるってんならな」
「ふひひ。おお、コワ」
「よせよ。男同士で争っている場合じゃない」
そうさ、今は戦争の真っただ中。男と女の戦争。
〝性はグラデーション〟と言われる時代に、ついてるだのついてないだので、男女を分けること自体がナンセンスだ。この世界を設計したヤツが、性別の欄をチェックボックスではなくラジオボタンにしやがった。おかげで人類は滅亡のピンチだ。
〝パタニティブルー〟と呼ばれる厄災があり、男の数が激減した。それは、人類に平等に降り注いだ未曾有の危機だが、男の体により深刻なダメージを与えた。妊娠や生理痛のストレスを男女に平等に与える兵器が使用されたとかバカげた噂が立ったが、火のないところに煙は立たぬとも言うだろう。
突然、サイレンが鳴り響いた。
「来たな。急ぐぞ」
「なにが来たんです?」
「ひひ。キノコ狩りだよ」
聞いたことがある。子種を残すために男を選別して連れ去る女の〝狩り〟があることを。
「アキラぁ、お前はキノコとタケノコどっち派だぁ?」
「あ? タケノコに決まってんだろ」
「だよなぁ。まったくキノコ好きの気がしれねぇぜ。〝刈〟られないように大事に仕舞っておけよ」
「心配するなよ」
そうさ。俺にナニはない。女だからだ。
つづく