手話通訳の未来は?②
前回①は、テレビ報道による手話通訳の在り方について書いてきた。今回は、もう一つコロナ禍によって目立つようになった新たな手話通訳の在り方について述べていきたい。それは、「遠隔手話サービス」である。
しかし、勘違いというが誤解しやすい2つの方式がる。遠隔手話サービスというのは一つの言葉で見受けていても方法が違うので、分かりやすくいうと「電話リレーサービス」と「遠隔手話通訳」である。
実はどちらが先に始まったのか。といったらよく誤解することだか、実は「遠隔手話通訳」である。別名で「遠隔情報保障システム」いうことで取り組んでいる前例は、各市町村によって行われてきたという情報がある。しかし、コロナ禍によってこれらのシステムがより重要性が高まってきたことで認知度が広がり、これらを「遠隔手話サービス」して聞くようになった。以下、北海道の範囲でお話すると2021年度4月より「遠隔手話サービス」を「遠隔手話通訳」と事業名変更してさらに分かりやすく理解していくための啓発に努める予定である。
「遠隔手話通訳」の概要 道内の市町村福祉担当や警察関係窓口(運転免許試験場)等にタブレット端末等を配置し、インターネットを介して北海道聴覚障がい者情報センターに常駐する手話通訳者が手話通訳を行う遠隔手話サービスを実施することにより、聴覚障がい者に対する意思疎通支援体制の充実を図ることを目的とする。 (※「北海道聴覚障がい者情報センター」HPより引用)
ここで指している「遠隔手話通訳」というのは、基本的に都道府県及び市町村の行政機関が直接、事業を行うこととされているので、実施の判断についてはバラバラである。実施できないところもまだまだ多く残されている。道内の場合、札幌市・旭川市・小樽市・釧路市、、、と中枢都市では確認されているけど、町村レベルでは今後の課題となっている。北海道では、その地域に住んでいる聴覚障害者に使っていただけるように理解啓発の普及を取り組んでいるところである。メリットは省略するとして、大きく困っているデメリットとしては・・・
1,タブレット端末を通しての手話通訳となるため、高齢ろうあ者には使いこなせるかどうか。(→タブレット端末の扱いも説明するように工夫しなければならない。)
2,緊急時の対応では受付できないところ(病院、弁護士相談なども含む)もある。この場合は、「電話リレーサービス」といった方法で対応しなければならないなど、選択肢を本人が判断できるかどうか。(→「遠隔手話サービス」の正しい知識の理解を学ぶことが求められる。)
ということである。もう一つ、「電話リレーサービス」というのがある。ここでは、日本財団助成によって普及してきた事業である。コロナ禍によってニーズは高まっており、その結果私たち耳がきこえない人にとっては、喜ばしい出来事が起きた。「電話リレーサービス」の公共サービス化である。「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が2020年6月5日に参議院本会議で可決され、2021年7月1日からサービス開始するということが先月(2月)に発表されたわけである。 (以下、総務省HPより引用したもの)
この「電話リレーサービス」の公共化によって、私たち耳がきこえないことで電話が出来ないということの障壁がなくなっていく時代がやってくるのである。これまでは、電話が出来ないことで色々な障壁の事例があった。
・緊急時の連絡(病院、警察、消防など)
・クレジットカードの本人確認
・24時間365日の対応(※現在は提供機関の営業時間によるため、ほとんどが21時以降~朝8時までは使えない。)
他にも様々ある。このことがきこえる人とまだまだ差別が残されていたという不便な電話でのやり取りがこの電話リレーサービスの普及によって、改善されることが来るかもしれないということだ。私にとっては、良い変化だと前向きに受けている。
実際、私も電話リレーサービスを何度も使っている。大学の通信教育ではまだまだ電話での受付するところもあり、緊急時ではかけなければならないこともあることもある。また携帯電話番号を登録しておいて、バイトの面接についての連絡が着信かかってくることもあるので、返事はタイムラグになるが当サービスを説明した上で折り返して電話をかけるようにしているなど、うまく活用している。
このようにまだまだ電話リレーサービスというものは、基本的にきこえない人からの利用が多いので、きこえる人からもきこえない人に当サービスを使って電話をするというようにしなければならないという双方向化というシステムをしっかり整備しなければならない。
もう一つぶっちゃけた話になるが、デリヘルを使いたくても中には拒否されたりして、不便になっているという話もある。理解してくれるところもあるが理解してくれないことが多いのである。デリヘルだけではなく、他にもカード会社だったり、公共会社の多くは電話リレーサービスという認知度がまだまだ低く、本人確認のためには不審に思われて拒否してしまうという捉えもあることだろう。その辺りのデメリットについても、改善することが必要になってくるのである。
このように遠隔手話サービスというのは、大きく見て2つの方式があることを紹介した。今、私たちが直面しているコロナ禍によって対面での手話通訳が難しくなった時にICT技術によって発達している新しい情報保障支援であるこのサービスを通してきちんと耳代わりとして生活している環境整備が進められていることは感謝したい。
でも正直言うと、対面ではないために細かな表情(ニュアンス)が掴めない、相手先の状況が見えないことがある。また本人の意思を相手にきちんと伝えられるかどうか。介入する先でのマナーなども含めてきちんとした信頼を作ることが出来ているかどうかも配慮しなければならない。このことが最も大事だと、常に私は考えている。
このことからぜひ今の若い人たちには、ICT技術によって発達した新しい手話通訳であっても情報リテラシーなどを含めてきちんとした活用を身に付けておかなければ、手話通訳者の支援する側の負担が多くのしかかってはならないものだと思っている。ということをぜひ理解して欲しいと願う。