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どりーみんパスポート

 大学生の間に、「めいどりーみん」に4度行ったことがある。いずれもラグビー部の面々とであったが、とても楽しいところだった。入国料500りーみん(日本円に換算すると500円相当)を払い、魔法のロウソクに火を灯して夢の国に入国する。メイドちゃんは触れられると泡になってしまうので触れることは叶わない。伝説のくまたんパフェ、正義のワンワンパフェなどを頼み、メイドちゃんと一緒に指で宙に♡を描いて「おいしくなぁれ、萌え萌えきゅん」と唱え、ジュースやパフェを"美味しくする"。他の客が発動したメイドちゃんのライブを観る…というのが概ねのパターンとなっている。
 ライブ中のメイドちゃんはとても輝いていて、観ていて元気を貰える。ある子はステージに立ってボーカロイドやアニソン、アイドルの曲を踊り、またある子は傍らでサイリウムを振り回して舞っている。メイドちゃん達はとてもキラキラしている。
 帰り道にいつも思うのは、メイドちゃん達はあそこで青春の時を過ごしているのではないか、ということである。
 メイド喫茶の時給は通常のバイトとあまり変わらない。そればかりか、ライブを発動しておきながらステージを一切見なかったり、メイドちゃんと一切話さ(せ)なかったり、反対にやたらめったらどうでもいい事を話しかけてきたり(ありえない確率 ヤムチャが天下一武道会の一回戦を突破した時くらいありえないよ)するような癖の強い人種が多い客層なので、福祉的な技量も求められる。メイドちゃんは決して楽な仕事ではないのである。
 しかし、ライブ中や接客中の自信に満ちあふれた彼女達の表情を見ているうちに、彼女達がこのお給仕をしているのは「憧れ」からなのではないか、と考えるようになった。
 メイドちゃんたちには、小中高と教室の隅にいるタイプ、所謂オタクの気質をもった子が多い(一概にそうとは言えないのかもしれないが、4度行ってホームページとかブログとか見まくってた僕はそう思った)。彼女たちは、文化祭や体育祭などのイベントで率先して人前に出るようなことはしなかったが、しかし前に出て輝いている人達や、アイドル的なキラキラとしたステージに憧れを抱いて学生時代を過ごしてきたのではないだろうか。そんな彼女たちは、その憧れを、メイドカフェでメイドちゃんとして働くことで実現しているのである。
 つまり先程も述べたが、彼女たちはメイドカフェで青春の時を過ごしているのである。だから、美しいのである。彼女たちのいるステージがキラキラして見えるのは、そこに高校球児が全力を尽くす甲子園のような青春が、あるからなのである。我々はメイドカフェへ行った時、青春を観させてもらっているのだ。

 自分の本質と憧れの姿は、なかなか一致しない。しかし、これを近づけようと励んでいる様は、とても美しい。先の「青春」を感じさせるのは、メイドちゃんたちのこのような態度であると考える。藍染カレンもそのような一人である。本来引っ込み思案で臆病であるはずなのに、自分の理想とする可愛さであったり美しさを追求してそれを実現しているので、とても美しい。生誕祭のMCではひょうきんでファニーな人柄が滲み出ていた(ハム太郎みたいでとてもかわいかった)が、対照的にパフォーマンスは「高貴」でアイドル的に可愛くあるよう徹底されていた。藍染カレンもメイドちゃん同様に、自らの描く憧れの実現に努める者なのであり、それゆえ美しいのである……好き……。

 自分はこの憧れを実現する力に乏しいので、彼女達のことをとても羨ましく思う、、、とにかく、自分の憧れを実現しようとしている人、またその実存は美しい。自分がメイドや藍染カレンに魅力を感じる理由の一つにはこれがある。この青春を謳歌するような人々の美しい姿を見ることが出来るならば、安いもんである、りーみんの5000や10000くらい。で、ござる。

 これを書いててふと思い立ち、自分がメイドカフェを訪れた日に卒業イベントをしていたメイドちゃんのブログを見にいったら、更新が2019年でおわっており、なんだかとてもemoになってしまった。夢を追う青春の日々に区切りをつけてメイドちゃんを卒業していった彼女たちは、現実に向き直って、以後世を忍ぶ仮の姿として生きていく、、、これってとても刹那だと思わなぁい?あたし、涙が出ちゃう、、、(余談だが、そのメイドちゃんに会っためいどりーみんドン・キホーテ栄店はほどなくして潰れてしまい、こないだ久しぶりに中を覗いてみたら廃墟になっていた。めいどりーみんの看板やら夢の国の物品が通路に無造作に置かれていて、The end of dream...だった。これってとても刹那だと思わなぁい?あたし、涙が出ちゃう、、、)

まぁ総じてなにが言いたいかというと、めいどりーみんのテーマソング『どりーみんパスポート』(dreamin passport)って、夢と現実、理想と現実を"行き来する"ことが示唆された表現でとてもよいなぁということ。どりーみんパスポートは我々がめいどりーみんに入国する時だけじゃなく、メイドちゃんがメイドになる際にも用いられるんですね。




連続してアイドル、メイド喫茶と、コテコテのオタクカルチャーを熱く語ってしまった。俺はこんな23歳になっているはずではなかったのですけれど。。。


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