映画『鹿の国』感想(途中からネタバレ)

『鹿の国』ホームページ  https://shikanokuni.vfo.co.jp/#theaters

鹿の国……めっちゃ面白かったな……。
諏訪の神事と、生活と共にある信仰をまるごと凝縮して、心抉る音楽と耳をくすぐるナレーションそして没入感のある鮮烈な映像に彩られて……。観る神事、観る諏訪の信仰生活、ドキュメンタリー映画って初めて見たんだけど最高じゃないですか?! 生活そのものが一作品に凝縮されて、そこには明確な起承転結はないけれど確かに心揺さぶられる、何と表現すれば良いんだろうこの鑑賞体験。とりあえず贅沢すぎる90分間なので皆行こう。

なおポスターを見ただけだとちょっと怖そうで子供が大変そうな印象があったけど全然そんなことなくのんびり楽しめました(ただし鹿狩猟シーンはあります、グロくはない)。

あと逃げ若ファンはめっちゃ楽しめると思う。まず聖地諏訪の映画だし、作中で再現される御室神事は中世に行われていたみたいなので明神様たちはこれやってたかも、という視点でも面白い。あとパンフレットに松井先生のコメントがある。


ここからネタバレ。
まず個人的な興味として、現代の人たちの信仰がどれだけ本心なのかが気になっていたので、今の諏訪を生きる人たちをたくさん取り上げてくれて様々に自分の信仰と共に生きているのを見せてくれて、泣きそうになった。

移住してきた人も自然と作品の中に入ってるのが嬉しくて、自分みたいに信仰とほぼ無縁に生きてる人がそういう場に参入しても良い勇気をもらえた。

あと僧侶の人が言っていた「神も仏も、人の心の中にある神聖なものへの感謝や畏れが形を成したもの」(うろ覚え)という言葉にしみじみとしてしまった、神仏が科学的にいるいないに関わらず、たしかに私たちの心の中にいるんだなぁと……。「心の中にいる」は大昔から聞いてきた言葉だけど初めて実感を伴って現れた気がする。


それから、作中のドキュメンタリーパートは諏訪の神事や生活を追いながら春夏秋冬を一巡するんだけど、最初の春に御神木に祈りを捧げてた人たちが最後の翌春に同じように祈りを捧げてて、時間感覚を円として実感できて泣いちゃった。逆に御柱祭はこの1年の円を7年ごとに突き破ってくる大イベントなんだなとワクワクもしたり。

ドキュメンタリーの中に所々挟まれる御室神事再現パートは、そこだけ演技だったりいとうせいこうさんのナレーションだったりしてちょっとおもろい気分で見れて清涼剤的で良かった。1〜3月を通して行われる神への接待があったからこそ、ドキュメンタリーパートで見られる豊かな生活を送れていたという世界観なんだなとなんか感謝の思いが湧き出てきた……。


細かく好きなところ。
ナレーションの能登さんが途中途中ミシャグジ様の多様な名を囁いてくるのが、耳をくすぐられるみたいでゾクゾクして引き込まれた。
鹿がとにかくぴょんぴょこ跳ねるのも可愛かった。
音楽もシンプルだけど深いところに引きずられそうになるのが良かった……エンドロールで、ヴィオラダガンバとピアノ(?)の二人だけだったけど本当?! もう一回見たくなってきたな……。というかヴィオラダガンバ、チェロっぽいけどより野趣溢れる感じの音でとても好き。

映画見てる時は信仰の所にだけ集中してたけど、後から振り返ると画と音楽がシンプルに良かったので、次はそこにも注目してもう一度見たいですね。もっと色んなところでやってほしい〜!あとパンフレットの中身がまた濃厚そうなのでこれから読みます!!


なおポレポレ東中野で上映前に御神酒をもらえて、「観る神事……!」と興奮したけれど、お水と一緒に飲まないと結構酔うので注意。


翌日パンフレットを読んでまたちょびっと感想書いた
映画『鹿の国』感想②パンフレットを読んだ|まは

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