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お正月になると思い出すラーメン屋さんの話
うちの近所のラーメン屋さんの話。
小学生の頃から通っているラーメン屋さんは、カウンター7席、2人掛けのテーブルが2つの小さいお店でご夫婦で営まれていた。とんこつラーメンのお店で、ギョーザ、焼きそばなどもある。
ラーメンの麺は細めんのストレートで白く、博多のめんに近いが柔らかいのが特徴。私の地元ではこのような麺のお店はおそらく他に無い。地元の一般的な麺はちゃんぽんの麺のような中太でストレートが多い。独特な麺もあってこのお店では注文してからの提供時間がとても短い。
スープは茶白い比較的あっさりなとんこつスープ。油こくなくいつも飲み干していた。美味しい。
トッピングには「チャーシュー」と「シナチク」がのっていて、このお店で生まれて初めて「シナチク」を食べた。この「シナチク」がとても美味しくてお店のオヤジさんに多めに入れてといつもお願いしていた。
週刊少年マガジンが置いてあり、ラーメンを食べながら読むのも楽しみだった。
自分が20代の時の話。
1月3日の仕事始めの時にお昼を食べようと外に出たが開いているお店が少ない中、ラーメン屋が開いていたので新年のご挨拶がてら入ることにした。
「よう!元気ね?」といつもの通りオヤジさんが笑顔で声をかけてくれた。オヤジさんは優しく気さくな方でいつも話しかけてくれた。今日は少し顔が赤かった。ラーメンを注文すると「お正月だから飲まんね(飲みな)」と焼酎の一升瓶とお酒メーカーの白いロゴが入った小さいガラスのコップを出してきた。今日はこの後も仕事あるからと断ったが、笑顔で「まあ飲まんね」とコップ一杯に焼酎をなみなみ注いでくれた。オヤジさんは酒臭く少し酔っぱらっていた。ラーメン屋で焼酎を進められたのは後にも先にもこれが初めてでとても衝撃的だった。オヤジさんのふるまい酒だった。ちょっとだけ頂くつもりだったが、残すのが悪い気がして一気に飲んだ。ラーメンと焼酎あうのかなと考える間もなく口の中がわーっと熱くなった。
それからラーメンが出てきた。麺が伸びていた(笑) オヤジさん麺伸びてるよ!っと心の中でツッコミながらラーメンを食べた。
オヤジさんも奥さんも亡くなられて今は息子さんが店を継いでいる。
正月になるとオヤジさんの笑顔を思い出す。オヤジさんありがとう!