不妊という人生最大の壁
私は25歳という年齢で「不妊」という人生最大の壁を目の当たりにした。それはもう大きな壁で、何度も何度も何度も枯れるほど涙を流した。
そんな私だが、現在は3年間の不妊治療を経て妊娠10ヶ月に入った。逆子が治らず、来週には帝王切開で出産予定だ。最後まで気は抜けないが、ようやく会えると思うと諦めないで良かったと感じる。実際に会ったら辛かった治療期間も不安だった妊娠期の事も吹き飛んでしまうのかな…と考えることがあるが、おそらく不妊治療の事だけは一生忘れない。というか忘れることはできない。
不妊と分かったのは結婚して2年半ほど経ったくらいだった。
実は一度自然に授かることが出来たのだが、8週目で心拍が途絶え、流産という結果になってしまった。本当に悔しくて悲しくて、それがきっかけで体調も崩れて大好きだった仕事も退職した。(原因は他にもあったが)
そして約半年後、なかなか授かることのできなかった私たち夫婦は、病院で検査を受けた。夫には何の問題も無し。原因は私にあったのだ。
抗精子抗体 強陽性
子宮の中に入ってきた精子を敵とみなし、排除してしまうというものだ。抗体値はその時期によって多少上下するものだが、検査時はそれがかなり高い数値で出てしまった。
そりゃ妊娠しないわけだ。
半年前の自然妊娠はかなりの奇跡だったらしい。
不妊治療にはいくつかのステップがある。
タイミング療法→人工授精→体外受精→顕微授精
私たち夫婦の場合、私の抗体値が高すぎて人工授精で授かる確率も極めて低いことから、一気に体外受精にステップアップすることになった。
保険も適用外、体の負担も今までの比にならない、けれどもその方法で授かれるならと、治療を受ける決心をした。
体外受精は、毎日の注射と薬の服用で卵胞(卵子)をいくつか育てて、ある程度の大きさに育ったら子宮に直接針を刺して卵胞を取り出す。その卵胞に精液を振りかけて、文字通り体の外で受精させるのだ。
そうすることで出来た受精卵を子宮の中に戻し、上手く着床するのを待つ。その間も毎日注射に通い、薬の服用も続けなければならなかった。
しかしそれでも簡単にはいかないものだ。
治療を始めた当初はすぐに授かれると思っていたが、受精卵を何度移植しても着床(妊娠)に至らない。原因も不明。
「陰性」という結果が出る度に泣きまくり「もう嫌だ、何で私だけ」という気持ちでいっぱいになったが、それでも可能性が少しでもあるのなら諦めたくないという想いの方が強かった。
採卵3回、受精卵の移植が6回、かかった金額は数百万円。県や市からの助成金もあるが、雀の涙ほどである。その上助成回数の制限もあり、その回数も超えてしまった。
有り難いことに、私たちの場合は金銭面で両親が全面的に支援してくれていたが、それでも申し訳無い気持ちでいっぱいで、何度も何度もお金のことで夫と言い合いになった。
そして去年の夏、その時点で受精卵は2つ凍結していた。グレードの優れているものが1つと、今まで移植した受精卵と同じくらいのものが1つ。
「次の移植でダメだったら一旦お休みしよう。」
そう決めた。
そして迎えた移植日、2つのうちグレードの高い方を子宮に戻し、2週間後の判定日を待った。
もちろんその間毎日注射に通い、薬の服用も続けた。
その結果、今回の妊娠に至ったのだ。
振り返ってみると比較的安定した妊娠生活であったが、発覚してから今まで、心は穏やかなものではなかった。
「いつ何が起こるか分からない。」
陽性判定が出てからも1ヶ月以上毎日注射に通わなければならなかったし、流産を経験していた為、常に不安が付き纏った。
何度も出血し、その度に背筋が凍った。
そして追い討ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染拡大。体調が安定する頃にはその影響でどこにも出掛けられず、出産も面会や立ち会いが許されない為、とても心細い。
しかし、これまでの経験がこれからの私たち夫婦にとって、家族にとって少しでもプラスの方向に向かってくれたらなと、物怖じせず頑張ろうと思っている。
最後に…
私は不妊治療を受けてきた事について、あまり隠したりはしてこなかった。
私自身、「妊娠する」という事に対してあまりにも簡単に考えていたからだ。
経験をしたからこそ伝えたい。
妊娠、出産は奇跡の連続だということ。
私のように何度治療を受けても授かる事が出来ずに諦めざるを得ない人がたくさん居るということ。
「百聞は一見(験)に如かず」
もちろん実際に経験した立場でないと、本当の苦しみや痛みなんて理解することはできないと思っている。
しかし、知ってもらうことはできる。
私は約3年間の経験を経て、もっと不妊治療について多くの人たちに知ってもらいたいという気持ちが強くなった。
なのでとりあえずnoteに綴ってみようと思った。
不妊治療を経験した人からしたら、「たった3年間」と思う人だって居るかもしれない。
私だって「タイミングや人工授精で授かれたなら」と思ってしまうことがある。
しかし重要なのは、不妊で悩む人それぞれが心身共に辛い思いをしているということである。
なかなか子どもを授かれない人はどんな段階であれ、他と比較してしまうものだと思う。
身近な人の妊娠、出産報告で「なんで私だけ」と嘆いてしまうものだと思う。
治療中は穏やかに過ごして機を待とうなんて無理な話だ。笑
私はこの経験を一生忘れない。
近い将来、一人でも多くの人が不妊治療について知ってくれますように。
治療を必要としている人たちにとって少しでも過ごしやすい世の中になりますように。
そう祈っている。