人生で最も楽しくない夏休み:5日目 「いいとし」であると自覚する
「いいとしですね」
そう言われてなんと返せばいいのかわからなくて、へらへら曖昧な笑みを浮かべることしかできなかった。
今日はお盆初日。お坊さんがお経をあげにやってくる夏の恒例行事。
お坊さんは一軒一軒檀家をまわり、仏壇にお経をあげていく。お経が終わるとふんわり雑談をして次の家へ向かうのだが、その中で私に向かって「何歳になりました?」と訊ねてきた。
「29です」と馬鹿正直に答えたところ、頂戴したのが冒頭のお言葉だった。
「いいとし」が「いいとしして」のそれであることは分かる。確かにいいとし、だよなあ、とダメージを受けてしまった。ボディーブローを決められた感じ。
それをきいた祖父が「まったくどうするんだか」と言ったのも、なかなか耳が痛かった。どうするんだろうね。
お坊さんと祖父は私が仕事探しの真っ最中とは知らないはずだから、この場合は結婚に関しての「いいとし」なのだろう。お恥ずかしながら、そちらもまっっっっったく予定はない、希望もない。彼氏なるものができた試しもない。
なんというか、恋愛感情がわからないまま29になってしまった。恋愛をするにあたって必要な才能をごっそりどこかへ忘れてきてしまったらしい。ついでに性嫌悪のおまけつき。
周りが結婚、出産しているのをみていると、私って一体なんだろうなあ、と思う。結婚はできない、子どももいない独身、それどころか失業の危機。情けない。いいとしして仕事が決まらないとべそべそしてばかりいる。
かたや2歳年上のいとこは今や立派なお母さん。祖父はそれを知っているから余計、どうするのか、ってなるんだろうなあ。ひ孫の顔を見せられなくてごめんね。それでいくと、私の両親は孫の顔を見せられなくて申し訳ない。
わからないなりに婚活するべきなのかな。それより先に仕事を見つけなければならないが。
30歳まであと3ヶ月あまり。せめて今よりマシな状態で、できることなら笑って誕生日を迎えたい。
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