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『情熱大陸』和牛編の個人的な話①
『情熱大陸』で和牛に密着し、3月に放送された。9月にはDVD化されることも決まった。本当にありがたい。大きな反響を生んだ2か月半の密着の間には、個人的にも様々なことが起こった。本編には関係ないが、せっかくなのでいくつかの出来事を書いていこうと思う。
水田くんが元々働いていた洋食店に取材に行った時のこと。取材が終わって片づけをしていると、ご主人が「昔MBSさんには『魔法のレストラン』で取材してもらったことがあったんよ」と話された。
『魔法のレストラン』とは、MBSで20年以上続くグルメ番組だ。僕が入社1年目に配属された番組でもある。そのことを伝えると、ご主人が続けた「いやー、Tさんにはお世話になってねぇ」の言葉に、僕は一瞬固まってしまった。
Tさんとは、数年前に若くして亡くなった女性ディレクターだった。このお店の取材に来ていたのだ。Tさんが亡くなったことをご主人が知っているかは聞かなかった。ただ僕は改めてお礼を伝えて、お店を後にした。
Tさんが取材に来たことを話しているご主人は笑顔だった。「放送さえできればいい」というアホなテレビマンがまだまだ存在するなか、数年経った今でもご主人からスッと名前が出てくるTさんの仕事はきっと丁寧で、いい放送になったのだろう。
Tさんの誠実な仕事が、今回の取材を円滑に進めてくれたひとつの要因になったのだと思う。僕が新入社員でドADだった頃、Tさんは怖い先輩だった。ペーペーだった僕に、ロケのいろはを教えてくれた先輩の一人。褒められた記憶はない。でも今回の取材で、Tさんが繋いでくれたバトンを次に取材する誰かに繋げることが、Tさんへのささやかな恩返しになれば、と思う。本編とはまったく関係ないけど、忘れられない出来事。
洋食店の名前は『グリル一平』。デミグラスソースがたまらない「マカロニ・イタリアン」がオススメです。