東京ジンジャーエール百景 13杯目『さよならの季節やからね』

あるADさんが番組を離れることになり「お世話になりました」とジンジャーエールのシロップをプレゼントしてくれた。このnoteのおかげかはわからないが、ジンジャーエール好きを認知してくれていたらしい。とっても嬉しいのだが「オススメの割り方は、アイスコーヒー4.5、牛乳4.5、シロップ1です」と言われた。聞いたことない。何かの罠ではないかと勘ぐってしまう。

画像1

ADという仕事は過酷だ。

大阪で勤務していたとき『堂本剛のやからね』という番組の演出をしていた。ご存知KinKi Kidsの堂本剛さんが芸人さんと好き勝手遊ぶという、実に大阪らしい番組。私は『梅田から地元・奈良まで歩いて帰るんやからね』という企画を立ち上げた。説明するのも恥ずかしいが、だいたい3か月に一度のペースで放送される番組なので奈良まで全然つかない、というボケである。

あるロケのとき、道に女性もののパンツが落ちていた。剛さん、シャンプーハットのこいでさんが落ちているパンツでボケたおし、銀シャリ橋本くんがひとしきりツッコんだあと、一行は奈良へと再び歩き出したのだが、パンツを一人撮り続けていたスタッフがいた。番組の女子ADである。

彼女には「ロケ中にいじった看板や商品を、取りこぼさないように撮影する」という、いわゆるインサート撮影の役割があり、自分の仕事を全うしただけなのだが「落ちているパンティーを撮っている若い女性」という絵面はとても滑稽で、その場で彼女は『インサートガール』と名付けられることになる。その後のロケでも『インサートガールをからめたボケ』が何度も繰り広げられ、『インサートガール』が放送中にツイッターのトレンドになるほどだった。

私は、エンドロールで彼女の肩書きを“AD”ではなく“インサートガール”としてクレジットした。気づいた人だけ笑ってくれればいいという些細なボケだ。インサートガール本人も喜んでくれて、無事放送は終わった。と思っていた。

放送から数日経ったある日、私は上司から呼ばれて「エンドロールで今後“インサートガール”という表記は使わないように」と言われた。

さぁここでクイズです。その理由は何だったでしょうか?(ここでもし正解できた人がいたら、今度スタバおごります)


正解を発表します。正解は「”インサート”という言葉が、若い女性に対する下ネタと思われるかもしれないから」でした~。

でした~、じゃあない。私は耳を疑った。中学生か。この業界、笑いのためならセクハラも仕方ないなんて1ミリも思ってないが、いくらなんでも過敏だろ、と。

結果、私は彼女の肩書きを次の放送で“AD”に戻した。(サラリーマンって感じですね)

インサートガールはその後、私と同じタイミングで東京異動になり、ADからディレクターへの階段を一生懸命かけ上がっている。今では笑い話だが、当時は一緒に憤慨していたことを思い出す。今も納得はしてないが。

何故かこんなことを思い出したきっかけになったのは、冒頭に書いた番組を離れることになったADさんからもらったジンジャーエールのシロップ。せっかくなので『アイスコーヒー4.5、牛乳4.5、シロップ1』を、実際に作って飲んでみた。罠かもしれないとドキドキしながら。

画像2

いや、めちゃくちゃ美味いんかい。シロップの甘みの中に生姜のスパイシーさがアクセントになり、飲んだことのない大人なミルクコーヒーになった。オススメです。

#ジンジャーエール #AD #堂本剛 #やからね