第1章 抗せぬ現実
……まさかまさか、首を振ってみるが現実は、現状はいかなる僕の
動作にも適切な回答を持ち合わないまま時計の針だけが刻々と進む
冷静さを取り戻せていない実に熱狂的な頭で必死に思い出す……
〜(回想)……「おい知ってるか?俺たち、エスカレーター式でMZ高校に上がる
よな?あの学校の学生寮の噂を」
幼馴染が興奮して僕に声をかけて来るが、僕は生返事を彼にかけるのと
自制を促す為にも彼の話を遮りこう返した
「知ってるけど…学生寮には何故か可憐な女子が____
しかも決まって一学年に複数人居るって話だろ?
うちの学生寮は男子寮しかないから
女子寮から間違って入ってきたっていう線も無い……
そしてそれはつまり男子寮にその女子達が溶け込んでいるって事」
その噂の意味するところはつまり、寮でのみ許された背徳的とも
卑怯とも取れる独占的で刺激的な恋愛を……本来はむさ苦しいとされ
敬遠すらされながらも学校に近いという利点だけで入らざるを得ない
男子寮にいながらも味わえるという、
実に虫のいい…転じて絶対ありえないであろう噂話をまだこの純真無垢な
彼は盲信しているようだ……(回想終わり)〜
なんて、あの時は一笑に付していたが……まさかこんな形で「噂」とご対面とは
とにかく……相部屋の奴に見られるのだけは避けなくてはな、隠す手段も戻る手段も思いつきはしないが…
……僕の姿形が女子のそれに変化した
なんて幻想とも戯曲とも取れない、現実離れしたこの現象を!一体この学校の学生の内、誰が疑念に思わないだろうか………!
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