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三人の魔術師:番外編 モノベさんの日常13「ある占い師との思い出①」
茗荷谷鑑定研究所のマリネ先生のセッションを受けに行った。
土曜日の午後、恒例の給料日後の週末のごほうび鑑定だった。
今日のテーマは「両親、実家への埋もれていた憎しみの感情」についてだった。
ガイドからのメッセージや、マリネ先生のアドバイスが胸にしみた。
「いろいろな取り組みの努力は認めていますが、
やはり、自分を嫌いであるという本当の感情に気づくことをしないままでは、真に自分を好きになり、受け入れ、変容していくのは難しいでしょう。
自分の本当の声をきいて、なおかつ、他人をあてにせず、自分をそだてていくことです。それにはまず、自分の本当の感情に気づいてあげることです。
ジャッジせずに。どんなにひどい性格であろうが、理不尽な感情であろうが、自分の中の真実から目を背けては、あなたが思っているような成果にたどりつくことはないでしょう…」
私はどうしても、自分の本当の感情を隠そうとしてしまうし、
それを他人に悟られないように生きてきたから…本当の自分の感情に気づくということが苦手である。
マリネ先生はガイドを通じて、厳しいが、的確なアドバイスをしてくださった。
今回も時間が短く感じてしまうほど、心身ともに可動域いっぱいのセッションで疲れはしたが…魂は震えていた。手ごたえがあった。
セッションが終わって、鑑定研究所を出ようとしたときに…
マリネ先生から呼び止められた。
「モノベさん、この後、予定あるの?」
「いえ…」
思わず顔が赤くなってしまった。
いい年して、ドキッとしてしまった。
「顔、赤いわよ。ふふふ。男性として誘うわけじゃないから…
心配しなくてもいいわ」
結構ざんこくなことを、先生はいつも平気で言う。
年甲斐もなくむきになった。
「離婚も経験した、還暦を過ぎた男ですから…
気が小さいだけで、先生に下心があるわけではございませーん!」
しまった。なんだか、もてない若造のような言いぐさになってしまって…
しかも、無意識に歯をむき出しにして口を大きく開けるという、ふだんは出さない癖が出てしまった。絶望感が襲った。
「ぷ。いいわね。モノベさんって、そんなひとだっけ?
素は面白い人なのね…知らなかったわ」
乾坤一擲のうったえが…突破口になったのか?
おおげさだが、マリネ先生との距離感が急に縮まった感じがした。
「あのね…あるお客さんから頼まれたことがあってね。
都内の喫茶店で占いをやってくれるところがあって…」
マリネ先生のあるお客さんが「ある喫茶店」で占いをしてもらったそうだ。それが、かなり一方的な占いだったため、影響を受けやすいそのクライアントの方がひどく悩んでしまいマリネ先生に相談にきたのだそうだ。
そのクライアントによると、その占い師は質問をしてもそのことへの回答はほとんどなく、ゆるぎないアドバイスをしてくるのだそうだ。
マリネ先生は意外にもこの占い師に興味をもったようで…物好きなことに、
自ら予約を入れたらしいのだ。どんな占い師なのか確認しに行くという話だった。
マリネ先生は今日の夕方5時半に予約を入れているとのこと。
なぜ、私が誘われたのかは…実は昨日、トートタロット占い師の御形先生を連れて夕方に訪れたそうなのだ。
ネットでは空いていればすぐに占ってもらえるということだったので、二人で行ってみたそうなのだが…あいにくふさがっていて…二人とも翌日ということになったということだった。
御形先生は、最初は興味があり、マリネ先生に付き合って喫茶店に行ってみたものの…ネットでの検索をしているうちに行く気が失せ、
今朝方、マリネ先生に行かない意思を伝えてきたらしい。
マリネ先生は電話で、二人が一人になる旨を知らせたところ…喫茶店の方が激怒したそうだった。喫茶店の方は「占い師」から、直接電話か来店をして、謝罪をするように厳しく言われたらしかった。
マリネ先生は、わかりました。本人を同行させて占いを受けさせます…と返答していたらしい。
御形先生にその旨を伝えると…御形先生はびびってしまい…マリネ先生に泣きながらどうにかしてほしいと懇願したとのこと。
そこで、私への「お誘い」となったわけだ。
よく考えたら、私が御形先生の代わりに御形先生として占いを受けに行くわけなのだ。
謝罪をするように厳しく言われた御形先生の代わりが私だ。
…理不尽さに奥歯が痛むような不快感を覚えた。
御形め~。とはいえ、マリネ先生が心配でもあり、
マリネ先生に「夕食はごちそうします」と言われて、
どうにも断る気持ちは湧かなかった。
しばらく、美人で独身の女性と二人で食事どころか街を歩くようなことは、
仕事以外あるわけもなかった。
「自分の中の真実から目を背けては、あなたが思っているような成果にたどりつくことはないでしょう…」
ガイドから伝えられたアドバイスを想い出していた。
「モノベユキオは、マリネ先生に50パーセント以上の下心があります!」
私は自らの本当の感情を受け止めることにした。
【ある占い師との思い出②へ続く】
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