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とーます模話のこざこざシリーズ 23「わたしが好きな俳句 画像、映像を想起させる一句② 山口誓子」

夏の河赤き鉄鎖のはし浸る(山口誓子)


日本の夏がさらに熱くなりました。

ますます暑さでけだるさは増し、
やりきれない気分は強まっている気がします。

夏をテーマとした俳句もさまざまな作品がありますが、
私がいま気になる夏のテーマはけだるさです(笑)。

今回の作品は、高校の教科書に出ていた、山口誓子氏の作品。

俳句の天才と呼ばれる人たちの中でも、テクニックを考えたとき飛び抜けた存在だと思っています。

漫画の世界でたとえると手塚治虫を想起させます。
叙情的ではないが、俳句の可能性を広げた偉大な俳人であると
認識しています。


ある解説をネットで検索しましたところ、
山口誓子氏は大阪の工業地帯に船で見学に行った先で、
赤い塗料が塗られた鉄鎖が夏の河(安治川=大阪の工業地帯の川)で
船か何かにつながれていたのでしょう…
その景観の写生句を詠んだということのようです。


私は、赤き鉄鎖を鉄が河の水で錆びて赤くなっていたものと
思い込んでいたのですが、そうではないようです。

住友の工場を見学したとかで…錆びないように赤い塗料で鉄鎖を塗ってあったものなのかもしれませんね。

この句を共産主義と結びつけられて、特高警察からにらまれたような話も書かれていたように思います。


思想うんぬんは別として…
私には夏の暑さ、けだるさを…高校時代に「赤い鉄鎖」に感じて、
印象に刻み付けられた記憶があります。

「夏の川」でなく「夏の河」…
遠州でいう、天竜川の広大な河口のうだるような暑さの…
掛塚の祭の時期に見た天竜川の夏のけだるさを思い出すのです。

安治川は工場地帯を流れ、決してきれいな水の流れではなかったでしょう。

汚れた水、河口近く、大きな海のような河、
夏のうんざりする熱さに、
「赤い塗料の鉄鎖」…
それが水に浸っている様…

情景が浮かびます。
まさに、画像・映像を想起させる俳句です。



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