【ロック少年・青年小説集】「25歳からのバンドやろうぜ1~初めてのステージに立ってみよう⑪【人生初ステージ1】~」
桜台という駅近くにあるライブハウスに向かう。
今日は人生初のロックバンドでのステージだ。
12月のクリスマスイブの日だった。
この日はクリスマスパーティということで、
Fたちの同窓生たちを中心にイベントが企画されていた。
ユキオはらち外なので、イベント全部に参加するつもりはなかった。
とはいえ、初ライブということで…何人か知人友人を呼んでいる手前、
客席に声をかけないわけにもいかない。
ライブハウスに17時すぎにについた。
イベントはもう1時間以内に始まる。
ライブステージはイベント開始後1時間くらい。
18時にパーティが始まり、ライブは19時開始という話だった。
しかし、主催者のひとりがFということで、うまく進むわけはないと思っておいたほうがいいだろう。
ユキオのバンドはトリで、前には3つのバンドが出ることになっている。
だいたい、20分くらいの持ち時間の予定で…20時くらいに出番がくる。
ライブハウスに入ると、バンド出演者には楽屋が用意されていた。
ちょっといい気分だ。
狭いライブハウスだが、楽屋にあたる控室は6畳くらいの広さがあって、
ソファもあった。
受け付けの女子に楽屋に行くように言われ、
暗い狭い通路を通ってここに来た。
部屋にはすでにユキオたちより前に出演するメンバーが座っていた。
ユキオは手をあげて軽くあいさつした。
「コグレさんですね。はじめまして…ボクはYです。ギターをやってます。
それに…彼もギターをやっているWです」
「Wです。Fから話を聞いています。ギターうまいそうですね」
二人とも小柄で瘦せていて、感じがいい青年だった。
ギターがうまいといわれるのがあまりうれしくないので、スルーしてにっこりして軽く流した」
「よろしく。きみらのバンドは何を演奏するの?」
Wが黒のレスポールをチューニングしながら、答える。
「ツイスト&シャウト、ボクが弾き語りでステンバイミーやります。
あとはオリジナルを2曲やる予定です」
オリジナル?
かなり驚いた。
どんな曲なんだろ?
「誰が曲を書いたの?」
「ボクが曲で、歌詞はFとボクとYくんが合作しました」
25歳からのバンド初体験のユキオには「オリジナル曲」という響きは魅惑的に威圧的に響いた。