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「あのマンガ、もう一回だけ読ましてくれ…」11〈サケトレインマンガ①~つげ義春先生、根本敬先生〉

模話1「サケトレインのマンガだよ」

模話2「最も影響力があった作家さんってだれなの?」

模話1「つげ義春、諸星大二郎、根本敬各氏かな…」
※場合により、敬称は略させていただきます。ご了承ください。

模話2「諸星大二郎先生はいまだに読んでるよね」

模話1「そうだね」

模話2「つげ先生はやはり引っ張られるわけ?」

模話1「まあね。幅広い作風だから、全部が全部もってかれるってことじゃないけどね。まあ、気が済んだっていうか…おなかいっぱい、満足できた作家といいますか…」

模話2「初期の作品から、文学的な作品、耽美的だったり、シュルレアリスム的なもの、私小説みたいなものとか…紀行文みたいのはよかったよね」

模話1「そうだね。そのあたりは手に取る機会があれば見たいかな…」

模話2「つげ先生の作品で、やっぱりかつて最も愛読したものは?」

模話1「晶文社刊だっけ?『必殺するめ固め』に夢日記みたいなやつと、長野とかの紀行文に沿ったイラストとか、あとはヨシボーの青春的なやつとか…」

模話2「けだるい感じの作品とか、貸本時代の回想した文学っぽいものとか?」

模話1「そうだね。あと、やっぱり小学館の高校時代に立ち読みした『ねじ式』と『紅い花』の小学館文庫のやつね…あれはいまでも読みたい気はする」

模話2「あの2冊も多岐にわたる作品だよね」

模話1「千葉の木更津へふらっと出かける話とか…なんだかなつかしいな…」

模話2「戦後から50年代、60年代、70年代初期をうつしとっている感じが当時異物感というか、見たことのない世界という感じだったんでしょ?」

模話1「そうだね。後に音楽でもそういう時代のものを好んで聴き漁ったりしたしね…文学も少しそういう傾向あったかも」

模話2「なんで、コレクションとかやめたわけ?」

模話1「かつては、つげ先生の世界というか、その空間、時空へとんで…安住して逃げ込んでいられた時期があったんだよね。それゆえに、同じ感覚ではそこにいられなくなったことで…かえって手放そうかなって思った次第です」

模話2「それだけ、どっぷりで心地よく逃避できる場所ではあったってことだよね?」

模話1「そのとおり。でもね…ある時期から、近しい波長だったゆえに、かえってそこから離れたいなって感じたんだよね」

模話2「アルコール依存症だとか薬物依存から逃れるのに似ているんじゃないかって言ってたよね、確か?」

模話1「まさしく。長くいすぎると…戻れないっていうのかさ…逆に言うと、社会を生きることがそこまで苦しくなくなってきたときに…もうここにはいなくてもいいかなって…依存症に近かったこともあるしね…もう少し客観的に距離をとりたいっておもったんだよね。それは、つげ先生だけじゃなくて、洋楽、日本のロック、絵画、文学含めてそうだね…」

模話2「根本敬先生というのはどんな存在だったわけ?」

模話1「一時期は、憧れてました」

模話2「どういう部分に?」

模話1「よく、先生の著書に出ていた言葉でさ…でもやるんだよとか、あらゆることがさ…ロックミュージシャン以上にロック的なアプローチな感じを受けたんだよ」

模話2「先生も音楽に造詣が深いよね?」

模話1「そうだね。そういうところにも惹かれたかな。目に見えない何かを追っているところが…自分と似ているところだし…ひかれました」

模話2「いいかおのおやじとか…非常に先端を行っていたともいえるかも…」

模話1「そうだね。しかし、異界、異形の世界を探究していくってのは…常々言っているように…覚悟がいることであって…やっぱり、電波系以降、根本さんの世界はあるゾーンをこえた気がしたね」

模話2「もともと合わない趣味もあったろうしね…でも、根本先生の代表作ってやっぱりあるわけでしょ?」

模話1「そうだね、全盛期をどこに置くかはさておき…せいし三部作ってのはやはり金字塔なんだよ…日本のマンガ史において…裏の歴史に残るなら、根本先生、逆柱いみり先生、ひのひでし先生とか…まあ、金字塔なんだよ。宇宙に善も悪も、良いも悪いもないとしたら…ただ、根本先生自身はとても知的で普通の感覚をもった方だし、ある意味普通の感覚であの天才性というか…確実にスターピープルかもしれないな(笑)」

模話2「隣国のシリーズや電波系だけじゃなくて、面白いマンガも書ける人だよね」

模話1「そうだね。村田藤吉シリーズの少年物や野球の話とか、よくここまで細かい設定をこんなばかばかしい異界的なストーリーが思い浮かぶかと一時期は新作をどきどきして、待っていたんだよ。神保町の交差点近くのマンガ専門店に単行本が出るのを心待ちにしていました」

模話2「なんで、読まなくなったの?」

模話1「さすがに…〇〇アストラルの影響、強すぎるから(笑)。偉大な作家であることに変わりはないよ。敬してなんとかってことだよ」

模話2「そうか…次はこれまで触れていない作家、つげ忠男先生とか辰巳ヨシヒロ先生とか山松ゆうきち先生とか…聞きたいね。続く~」