【ロック少年・青年・中年・老年小説集】「中年からのバンドやろうぜ1…〈肥満とブルーズ、減量とロック⑧〉~気功教室とロックふたたび2~」
ユキオはその後、気功教室に通いだした。
うさんくささは感じたものの、
先生はおもしろく、話はたのしかった。
実際の気功のレッスンと講義がセットになっていた。
ただ…講義が多少長く、
しゃべりたい人なんだなとわかり、
日を追うごとに少し疲れてきていた。
半面、気功のレッスンは7種類であったが、
本格的であった。
先生が知っている気功は100以上あって、
その中から、いくつかを選んで紹介しているとのことだった。
修了までに8つほどの気功を学んだ。
先生の声が入ったカセットテープが渡され、
それを聴きながら気功をする。
慣れたら、テープをきかずにやったほうがいいという。
低い椅子に座り、テープに合わせて
最初にストレッチのようなものを行う。
↓
次に目を閉じてリラックスする気功に入る。
↓
呼吸のパターンをいくつか変えながら、
麗蘭瘦身気功に入る。
↓
まずは天目という経絡に両手のこぶしをにぎり、
中心は孔をつくるようにして当てる。
↓
そのまま、肘が膝につくように前傾し、
気功に入る。
↓
息を勢いよく吸う。
↓
4秒ほどとめて、
さらにもう少し息を吸い、
限界になったときに吐く。
その際には腹筋から動かさない。
あくまで呼吸で導くように行う。
↓
数分間、テープに合わせて行う。
終わったときに、こぶしをはなし、
手のひらを重ね、
次の気功に移行する。
男性は右手のひらを上に、
女性は逆に。
↓
力を抜く。
まず、鼻から糸や煙が出入りしているイメージで、
ゆっくり呼吸をする。
↓
数分後に、鼻からは吸わないイメージで、
鼻から吐くことだけ意識する。
ゆっくりゆっくり呼吸をする。
↓
最後に、吸うことも吐くことも意識せず、
胸を意識する。
胸があるんだなとぼんやり意識する。
↓
一通り終わったら、
テープに合わせて集功をする。
気功であつめた気をあつめ、
丹田におさめる。
↓
手のひらから顔にすりこんだり、
意識で丹田までのそれぞれの経絡を通して
気をおさめる。
↓
終わったら、テープに合わせて、
もう一度、体の力を抜いて、
静かに目を開けて終了する。
その間、35分から40分くらい。
気功は空腹時で行い、
真夜中はあまりよくないといわれていた。
できれば、朝がいいという。
1日3回、4回やれば効果があがる。
そう言われたが、仕事もあるし、
なかなか難しい。
もう一つの気功はいつでもできるということで、
毎日、暇なときにやることにしていた。
この気功はおもしろい。
横隔膜を使って、
内臓をマッサージするという気功。
まず、肺を膨らますように息をはやく吸う。
↓
そのときに腹式呼吸と逆に、おなかを引っ込める。
↓
そうすると、腹筋や下がった横隔膜に、
内臓は圧迫される。
↓
息を吸い切ったときに、
力を抜きながら、さらに横隔膜を下げるように、
下腹を出すようにする。
↓
内臓は、そのとき圧迫から自由になる。
↓
これを繰り返して内臓を指圧したり、
マッサージしたりする効果が得られる。
内臓を運動させるような効果が生まれるらしい。
↓
これを40回1セットで、それを3回から4回以上行う。
ユキオはこれにはまり、1000回までやるようになり、
さらに増やすようにした。
週1回の教室だった。
毎回、最後に体重測定が行われる。
全10回の講座だったが、
ユキオは、毎回約500グラムから1キロ体重が落ちていた。
最後の教室の日、
入会から、10キロの減量を達成した。
教室ではユキオがダントツで、
先生自体が実は驚いている感じがした。
先生は機嫌もよく、
ユキオに向かってこう言った。
「コグレさんは、
昔の時代の人と同じメンタリティーがあるみたいだね。
実はね、この麗蘭瘦身気功を始めた当初は、
コグレさんくらいに痩せる人も結構いたんだけど…
最近は意志の力が弱くなってるのか…
せいぜい4キロから5キロくらいで終わっちゃう人が、
残念なことにおおくなっちゃってね。
コグレさんの集中力は昔の日本の人たちを思わせるから、
がんばって、いろいろ挑戦してみてください」
おらおら系のひとだが、
学問や研究に対しては真摯な方だった。
感謝を述べて、修了式に出た。