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【少年・青年小説 食シリーズ】「東京に食べるためにやってきた③~常連客、行きつけの定食屋に憧れていた頃の話:餃子の王将編2~」
ユキオは、中野サンプラザの向かいの歩道に自転車をとめた。
北口サンモールを横切り、「白線通り」に入る。
「白線通り」と聞いて、ときめかないわけにはいかない。
初めて上京して中野区に住んだユキオは、
近くに中野という大きな街があることに興奮していた。
ここなら、新宿に行かなくても、たいていのことは用が足せる。
中野サンプラザはロックファンにとっては知られた名前でもあった。
いずれ見ることになっていたオジーオズボーンも、パブリックイメージリミテッドも中野サンプラザであった。
ユキオはその区の住民であることに満足していた。
「白線通り」は、初めて中野駅周辺で食事をしたとき、そのあたりを歩いていて初めて知ったのだが、食堂がたくさんあり、興奮したものだった。
餃子の王将はその通りに鎮座している。
活気があるその店を何度か外から見ていた。
入りたかったのだが、地元では餃子の王将に入ったことも見たことも記憶がなかった。
餃子の値段が安い。
それだけでも、目を引いた。
壁にメニューがたくさんかかっているし、
ディスプレイで唐揚げや餃子などが盛り合わせになったものなどを見ていた。
念願の餃子の王将に、今夜初めて入る。
興奮と緊張があった。
店内に入ると、活気に気おくれする。
店員が怖い。早めにカウンターに座り、メニューを見渡す。
「ポパイ定食」だとか、「王将定食」「王将ランチ」だとか、
みたことのないメニューがあり、迷う。
あまり予算がないが、店員のでかい態度に、
つい結構値段の高い「唐揚げと餃子とかに玉もどきがセットになったもの」を指さして注文してしまった。
よく見たら、「餃子定食」は二人前もあって、キュウリの漬物にスープがあって500円しない。
後悔したが、頼みなおす勇気はなかった。
「いーがこーてー」という言葉がとびかっている。
中国語なのか?
のちに焼き餃子一人前という意味だと知ることになるが、
その時はまったくわかるわけもなく…勢いに押されているユキオだった。
結構早めに出てきた。
皿が大きい。
唐揚げように、胡椒塩がなんだか高めの中華料理店に来たような気になる。
食べるとうまい。
餃子は1人前しかないが、ご飯はまあまあの量だ。
スープもついているし、
まずくはない。
かに玉みたいなものもうまい。
ちょっとした中華料理店の贅沢な夕食のようだ。
次回のために、細かくメニューを見ておく。
炒め物も数がまあまあ多い。
次回はとにかく餃子定食を大盛りにして食べることにしよう。
早めに食べて、店を出た。
これは、なかなかいい店じゃないか。
店員の口がわるいことは好きではないが、
店内は明るいし、餃子が安いのがいい。
ユキオはその後、ブロードウェイの地下と上の階の飲食店を一通り、下見をして、まんだらけに寄って帰った。
まんだらけで、F店長に「漂流教室」が11巻そろうなら買いたいと交渉して帰った。
まんだらけは、まだ狭く、手塚治虫の本がガラスケースの中に飾られていたが、本はそこまで多くはなかったのだ。