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【少年・青年・中年・老年小説集】「モノベさん外伝…〈仙人と遇った話③〉」

「老師…なんで、ボクの夢に出てこられたんでしょう?
何か理由があるのですか?」

過去生が室町時代の老師は、落ち着き払ったにこやかな
表情でユキオに言った。

「君が求めたから、私が応じたってことだね。
私の次元では両者の合意でこういうふうに会うことが決まるんだよね」
「ボクが希望したってことですか?」
「初めはそういうことになるね」

「ボクはなんで老師に会うことを求めたのか、
実はわからないんですが…いや、
分かるような気がするし…
確かにボクの悩みというか…
相談に乗ってほしいと思っていたかもしれませんね」

「君の状態ってのは私にはわかるけど…
このレベルでのルールでもあるけど、
自分が求める必要があるね。
つまり、何が知りたいかだとか、
何を求めてるのかをはっきりさせる必要があるのよ」

「悩みはたくさんあります。
いまききたいことは…まずは、
ボクの人生がなんでこんなにうまくいっていないのか?
潜在意識でどう思っているかが、
人生での出来事に影響するとかいうじゃないですか?
だから、自分の潜在意識というのか、
表の意識ではない裏の意識を見てみたいんです」

「そうか。わかったよ。
じゃあ、潜在意識のユキオくんに
登場してもらおうか」
「え?」

目の前に、突然もう一人の自分が登場した…
自分に似ているとは思うが…
全く同じではないルックスに違和感があった。

「これが、潜在意識の自分ですか?」
「なんだ、気に入らないのかね?(笑)」

はっきりいって…こんな悪人面をしていることに、
がっかりしていた。
自分の顔をジョーカーみたいな悪魔風の顔に
書き換えたらこんなふうになるかもしれない。
そんなふうに感じていた。

「同じくユキオくんだからさ…
便宜上オモテユキオくんにウラユキオくんと呼ぶことにしようかね」

「彼とは話せるんでしょうか?」
「ああ、話してごらん」

ウラユキオは不快そうな、おどおどしたような
ふてくさったような、
いかにも性格が悪そうな表情で話し出した。

「どうせ、ボクは生きてる資格なんかないんだよ。
おまえがどんなに幸せを望もうが、
かなうわけはない」
「なんでそんなこというんだよ」

オモテユキオはウラユキオの胸倉をつかんで
殴りかかろうとした。

老師がゆっくりと杖を二人の胸元に差し入れてきた。

「ははは。まあまあ。落ち着きなさいな。
殴りあっても同じ自分なんだから…
どっちも同じように痛いだけだぞ(笑)」

それは本当だった。
ウラユキオがオモテユキオの股間を蹴り上げたときに、
ユキオには激痛が走ったからだ。

次の瞬間、
二人とも見晴らしのいい茶畑の細道にうずくまっていた。

ああ…表の意識の自分がばかなら、潜在意識も同じくばかなんだな。
ユキオは鈍い下腹部の痛みをこらえながら、
もっと痛がっているもう一人の自分を見ていた。






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