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小説「アルアサ、ボクハカクセイシマシタ」①
ある朝、ボクは覚醒した。
ある日、夜明け前のことだ。
目を覚ましたときに、いつもと見え方が違うことに気づいた。
部屋の様子はいつもと変わらないが、
視界の周囲に黒っぽい線がぐじゃぐじゃうごめいている。
輪郭は茶色に紫が混じったようななんとも形容しがたい色。
その真ん中に魚眼レンズというのか…
夜9時のロードショーのオープニングに出てきた球形といえばいいのか…。
ふとフォログラムという言葉が浮かぶ。
そうか。
これはエスエフだとかスピリチュアルで出てくる
フォログラムの見え方に違いない。
三次元とはフォログラムであって実体がないという、
実はほんとは、よくわかっていない例の話を思い出した。
ボクが覚醒したと仮定すると、
お釈迦さんの十二縁起だとかエゴを超えた宇宙の法則が分かるはずだ。
こりゃあすげえ。
諸星大二郎先生の作品のように、
ブラフマンが語りかけてくるかもしれない。
そう思ったときに視界がオーロラの色で見えだした。
そうこなくっちゃな。
まだベッドの上であぐらをかいていたボクは天井を見上げた。
すると緩く回転をしながら、何かの破片が動いているのが見えた。
例えて謂うと縦長の湯呑みになみなみ注がれたお湯の底から
お茶漬けのりがくるくるまわっているのを見上げている感じであった。
海苔やあられや…なにやらの…細長い短冊のような切れ端が、
螺旋を描いてのぼっていく…。
いま、起きているが、頭は半分眠ったような状態だ。
いわゆる変性意識に近い状態なのかもしれないが…
いまある幻覚とも思える、起きたまま見ている明晰夢を
体を起こしてみている感じだった。
しばらく、みとれていると…
お茶漬け海苔は終わって…
光の小さなガラス細工の玉のようなものが
ぷちぷちはじけるように見えだした。
だんだん、目が覚めてきた感じなので、
カーテンを開けてみた。
幻覚のようなものは消えた。
その代わり…太陽が異常に明るく感じる。
そして、なんてきれいな光なんだろう…
ただのふつうの木造アパートの朝なのに…
余りにもまぶしく感じる。
アア、ボクハカクセイシマシタ。
本気でそう感じた…
オーロラの光が目を閉じるたびに見えた。
会社にいかなきゃいけない。
覚醒してても、ボクは
働いてることにはかわりはないのだから。
急いで朝の支度をして…
家を出た。
【続く】
【tomasmowa2025】