見出し画像

【少年・青年・中年・老年小説集】「モノベさん外伝…〈ふたりのユキオくん①〉」


「夢をみたんだけどさ…モノベさん、そういうの詳しいでしょ?解釈してくれないかな?」

「詳しくないよ。好きだけどね。よくマイナビウーマンとかで調べるけどね。どんな夢?」

「すごく哀しくて落ち込んでたのよ。どうやら大学を卒業した後みたいでさ。周りのひとがもう卒業式は終わったし、君のいる場所はないっていうわけさ」

「ふうん。その後どうしたの?」

「電車かな?向かい合わせに座る車両に座って…移動しながら落ち込んでた。右隣にどうやら母親が座ってたみたいだけど…こっちに興味を向けずただ無言だったんだよ」

「コグレさんは母親との関係はどうだったの?」 

「子ども時代の話?大人になってから?それとも現在?」  

「いま感じてる母親との関係ときかれて浮かぶイメージかな?」

「過保護だったけど実は本当のボクには無関心な人だったよ」

「愛を感じないかんじだね」

「母に?それとも母から?」

「どっちも…」


コグレユキオは関取が賞金を受けとるような感じで席を立ち、
追加注文をしに行った。

モノベユキオはぬるくなったルイボスミントティーの残りを飲みきった。

まだ11時前。
土日でもモーニングをやっている。
コグレユキオがモーニングを買いに行ったのに気づいた。


恥ずかしいが席からコグレユキオに向かって追加を頼んだ。

「コグレさん何にした?」

「Aに決まってるだろ」

「ボクのも頼んでくれる?」

「何」

「Aに決まってるだろ!」

「ぷ。ドリンクは?」

「レモンティーホットお湯多めだ」


モノベユキオの声が大きく、
店員が笑いをこらえているのが見えた。

激しく後悔したが…コグレユキオは
追い討ちをかけるようによく聞こえる声で、

「お湯多めだって言ってますが大丈夫ですか?」

と店員に言った。


モノベユキオは顔から火が出るような思いで…
3人の店員の爆笑を見ていた。




【©tomasu mowa 2025】