覚書、冬
ふと、仕事からの帰り道に
カフカって縦揺れだな、と思い
ドストエフスキーって横揺れだな、と思った
「カフカ縦揺れ、ドストエフスキー横揺れ」
とスマートフォンに打ち付けて
青い送信ボタンを押そうとして
ちょっとして、やめた
言及しなくてもいいようなことを
わざと嫌な方向から突いてくるような
そんな糞チンケな言葉が聞こえてきそうで
やめた
「いや、ちがう
縦揺れはドストエフスキーで
横揺れはトルストイだ!」
とか
「カフカはロックンロールで
ドストエフスキーはブルースで
サリンジャーはテクノっぽくね?⭐︎」
とか
「芥川が敷き布団なら
太宰は冬用の羽毛布団、漱石は井草の枕かも」
とか
そういう自分勝手で素敵な意見が
知りたかっただけなんだけど
そしてそれを予測して自分で行き詰まっている自分も、本当に格好悪くてしんどい。
誰かのダルい反応を気にしながら
純度を薄めて何かを言うなんて
ナンセンスな世界だな、と
結構悲しくなる
言葉遣いが乱暴なのはそう言う気持ちだからです。
宇宙にぷかぷか浮かぶように
好きな人と、毛のやわらかい動物を抱きながら
踊ってばかりいたいだけなのに。
渡部有希