【第2節:栃木SCレビュー】
Jリーグが再開された。
僕たちファンサポーターは待ち望んでいた。
リモートマッチ(無観客試合)ではあるものの、やはり、緑の広大なピッチで繰り広げられるサッカーゲームは素晴らしく、またこの日常が戻ってくる。
コンディショニングはどうだろうか。
約4ヶ月もの期間、公式戦から遠ざかっていた。開幕直前のキャンプで追い込んだフィジカルコンディションが、この中断期間に一度リセットされている。Jリーグ再開に向けて、各チームのコンディショニング調整の手腕も問われるところだ。
栃木SCは2月23日に行われたV.ファーレン長崎戦で、積極的なストーミングサッカーを展開した。今後もそのアグレッシブさを絶やす事無く、シーズンを闘っていくのだろうか。
【相手のデンジャラスゾーンに侵入する勇気】
やはり前線からプレス網をかける姿勢は健在であった。3バックの相手がビルドアップを開始させると、“丁寧かつ手順通り”にプレスをかけにいく。
時には4−2−4のような陣形を取り、牽制をかけるシーンもあった。しかし、残念ながら開幕戦ほどの躍動感を感じることができなったというところが率直な意見でもある。
相手の危険区域に侵入出来ていないのだ。
プレスをかける意義としては、ボール保持者をルックダウンさせる(相手の視野をボールに集中させることによって、周囲の状況を把握させず、プレーの判断を鈍らせることが出来る)ことにあるのだが、山形の選手は少しばかりの余裕を持ってボールを回していた。
余裕を持ってボールを回せる山形は、少しずつそのプレス網を掻い潜れるように。
栃木はもう半歩だけ、相手に詰め寄り、相手を不快にさせるくらいのアプローチが必要なのかもしれない。
ゴール前での守備は慎重にセオリーを守るべきだとは思うが、前線でのプレスではもう少しカオスになってもいい。
【エスクデロ競飛王】
この試合、エスクデロ選手が望む気持ちのいいシチュエーションでボールが供給されることはなかった。
とはいえ、各ポイントで起点となる巧みさが垣間見えたし、やはりエスクデロ選手の足元に確実にボールが渡ると、そこにはアイディアがあった。
だとするならば、前線にロングボールを供給するという『空中戦』に持ち込みながらも、グラウンダーで斜めのパスを差し込むなどといった『地上戦』も採用してあげていいのではないだろうか。
もちろん矢野貴章選手には絶対的な高さと、空中線の強さがある。そんな矢野選手をターゲットにロングボールを供給し、その競ったセカンドボールを技術力の高いエスクデロ選手や、右サイドの明本選手が前向きに拾うことができれば、より速くゴールに辿り着けるかもしれない。
しかし、この試合ではそのようなシーンを見ることが出来なかった。
そのような不確実性の高いロングボールを武器にしながらも、時折、確実性の高いグラウンダーのパスを確実にエスクデロ選手に供給することができれば、相手を翻弄できたのではないかと思う。
実は相手DFからすると、『ロングボールに対して競る』という単一的なタスクをこなすことは精神的に容易である。
しかし、『ロングボールに対して競る』というタスクに加えて、『エスクデロ選手に入ってくるグラウンダーのパスを遮断する』というもう一つのタスクを与えてしまうと、精神的な疲労を蓄積させることが出来るかもしれない。
【ゲームを司るのは誰なのか】
ハードワークベースのストーミングサッカーは魅力的だし、僕はこういうサッカーを見るのが好きだ。
しかしそれは、そのサッカーを展開するチームが、そのサッカーをコントロール出来ている時に限る。
チームにはいくつかの引き出しがあり、相手の状況を吟味出来たうえ、ストーミングサッカーを繰り出す。
そういった時のハードワークサッカーは異常なほどに驚異を発揮してくれる。
しかし、この手段しか無いという状況下で、やむを得ず頼るしかないというストーミングサッカーには少しの魅力が欠けてしまう。
ゾクゾク感が無いのだ。
マインドセットの時点から、『俺たちがコントロールしているんだ』という『アクションマインド』が必要なのかもしれない。
【シーズンを通しての調整力が問われる】
その1試合で露呈された課題を如何に解決し、次節では同じ失敗を繰り返さないという調整作業が、長いシーズンを闘うにあたって最も重要になってくる。
次節ではどのような陣営で闘いをスタートさせるのか。
前線からのプレス網にはどのようなテコ入れが行われるのか。
攻撃の手段としては『空中戦』に加えて、『地上戦』は採用されるのだろうか。
その過程を楽しむこともファンサポーターの醍醐味である。