日記:20231205〜稲生平太郎『アムネジア』〜
稲生平太郎『アムネジア』読了。むかし読んでよくわかんなかった本を読み直そうシリーズ。
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【ネタバレを含んでいます】
青春ホラーの名作『アクアリウムの夜』の作者であり、オカルト研究の名著『何かが空を飛んでいる』など、マニアックな著書でカルト的な人気を誇る作家・稲生平太郎の小説第2作目。
『アクアリウムの夜』がすごく好きだったので、期待して読んでみたけどちょっと期待外れに終わった印象だけ残っていて、ストーリーなどは何も覚えていなかった。
15年以上ぶりに再読してみて、作者の仕掛けや謎めいた構造を今度は楽しめた一方、前回は内容を理解できず失望したのも仕方ないことだったとも思った。
序盤から(というか内容紹介のあらすじから)何度も仄めかされる暗示的なガジェットが、結局なんだったのか判然とすることなく終局を迎えるので、消化不良に感じる人も多いだろう。
昆野という発明家らしき男の家を訪ねたくだりから、いきなり主人公の現実の認知が怪しくなり、熱に浮かされたような幻覚とも妄想ともつかない場面が続くあたりは、アンナ・カヴァン『氷』との類似性も感じた。そこから澤本の死体が見つかる展開もホラーとして極上。
記憶の一部を失い、微妙に名前を変えながら、主体の彼我さえ見失い流転していく人たちの「生」は哀れであり、恐怖でもある。
ただ、全体を通して読むとホラーともミステリともつかず、作者の意図通りではあるのだろうけど、あまりにも曖昧模糊としていて手放しで面白かったとは言えなかった。