RAYワンマンライブ『Perennial』
9月21日
RAY『Perennial』@Veats Shibuya
直前のバンドセットライブやコット生誕ライブの仕上がりっぷりに、期待を高まらせながらついに当日を迎えたRAYワンマンライブ。
なるべく身軽な状態でライブに集中しようと、ドリンク代とチケットだけサコッシュに入れて早々にリュックをコインロッカーに預け、会場待ちの列に並んだところでS席特典のTシャツを受付で渡されることを思い出した。Tシャツ重ね着したら暑すぎるしどうしようと自分の愚かさを呪ったものの、がんばってTシャツを丸めたらサコッシュに収まった。
1曲目、いきなり耳慣れないメロディーが流れる。RAYの過去曲やドッツ時代の曲にはライブで聴いたことがないものもあるからそれかとも思ったけど、周りの反応を見るとどうやら新曲っぽい。でも、SNSでティザーが流れていた新曲とも違うみたい。
歌詞がなかなか聴き取れなかったのだけど、マイクバランスのせいというよりも、どうやら外国語の歌詞らしい。サビで「イェライシャン」というフレーズが聴こえてきて、やっと中国語と判明。
今回のワンマンライブは「原点回帰」を謳っていたけど、その1曲目でいきなり中国語歌詞の新曲を持ってくるとは大胆すぎる。もしかするとRAYにとっては、予想を裏切ることや想像を超えることが「原点」なのかもしれない。
新曲の後、「愛は散っては咲くのを繰り返す」といった内容の短いナレーションが流れ、『ディス・イズ・ノット・ア・ラブソング』。未確認なのだけど、あのナレーションはお休み中の愛海さんの声だった気がする。
前回のワンマンで愛海さんが復帰した曲も『ディス・イズ……』だったし、歌い出しもあみみパートだし。絶対そうだよね? ね?
さらに『オールニードイズラブ』が続き、この曲も個人的にあみみを強く想う曲で、序盤はずっとこの会場のどこかで見ている愛海さんのことを想っていた。
大好きな曲『Fading Lights』から、RAYの代表曲『世界の終わりは君とふたりで』と、ここまでは割と静かめに、じっくりと世界観を浸透させていくような展開。
「Fading Lights」のアウトロ、内山さんの「おたけび」で個人的な感傷は吹き飛ばされ、ここからステージ上だけに集中して見られた。ありがとう、結愛ちゃん。
大きく空気が変わったのは『See ya!』。まさかこのタイミングでこの曲が来るとは思わなかった。さらに『フロンティア』、『星座の夜空』と大曲が続く。そういえばこのブロックは過去のワンマンで初披露された曲で、そのへんも原点回帰なのかも。
以前、Finger Runsとの対バンで、序盤からフロンティア、See ya!と畳み掛けてくるセトリに、四天王プロレスを見ているような極限的なものを感じて複雑な気持ちになってしまったのだけど、この日は余計な心配をすることなく堂々たるパフォーマンスに身も心も委ねきって楽しめた。RAYメンバーが経験を重ねて逞しく頼もしくなったからこそ。心から拍手。
ここでメンバーがいったんステージを去って、幕間VTRを挟み、新衣装に着替えて再登場。
新衣装はこれまでと比べるとシンプルでシックかつ清楚な印象。照明のせいもあるのか、緑がかったグレーのようにも青っぽくも見える不思議な色合い。メンバーごとの形の差はそれほど大きくないけれど、お花をあしらった装飾などが少しずつ異なってる。
後半1曲目は『春なんてずっと来なけりゃいいのに』。激しめの楽曲と衣装のギャップが少し意外だったけど、この後、「花」が新ビジュアルのモチーフになっていることが明かされ、納得。ガーベラの咲く丘で踊ってるあなたを見てた。
続く『ATOMOSPHERE』は衣装にもぴったりで、まさしく花が咲き誇るようなパフォーマンス。眩しくて涙出るかと思った。
ここから『星に願いを』『わたし夜に泳ぐの』『火曜日の雨』と激しめの楽曲が続く。「わたし夜に泳ぐの」のアウトロは「火曜日の雨」への繋ぎでいつもより長めになっていたような気がするけど勘違いかもしれない。
『火曜日の雨』の狂乱の果てに、いきなり『Bloom』が始まってセトリの高低差に笑ってしまいそうになった。
でも、これも『NOISE_DANCE_FRENZY』と『RAY_Bloom』という2つのワンマンライブの表題曲ともいうべき楽曲で、これまでのワンマンを総括する集大成的な意味合いがあったのかもしれない。
『Bloom』はステージ後ろのモニターに、初披露時と同じ映像が流れていた。「Bloom」「Re:Bloom」「Re:Re:Re:Re:Re:Bloom」という文字が、前半に流れた(たぶん)あみみのナレーションと重なり合い、胸に込み上げるものがあった。
すると、『Bloom』の後にもう一度ナレーションが流れた。びっくりして内容を忘れてしまったのがほんとうに不甲斐ないのだけど、「愛ってね」で始まる声に続いて、予告されていたもう一つの新曲のイントロが始まり、その美しさに涙が出そうになった。
変拍子まじりの切なく張りつめた空気に、演劇的ともいえる振り付けが合わさる。特に中盤でステージ上に横たわったメンバーたちを、紬実詩さんが見下ろしながら歌う場面が鮮烈。
身を横たえた琴山しずくさんが、まばたきひとつせず目を見開いていたのも印象的。そういえば、『火曜日の雨』の「青!青!」のところでも瞬きをせず、狂気を宿らせた目を開きっぱなしにしていた。特典会で本人にそのことを話したら「まばたきすんの忘れてたんかなぁ〜」と笑っていて、ほんとうに愛おしい。
そして中盤、みこちのソロパートの思い切り声を張り上げた慟哭のような歌声に、完全に涙腺が決壊してしまった。その後の月海まおさんのソロも素晴らしかった。
これまでRAYはわりと楽曲の美しい世界観を表現するため、あるいは、激しい轟音との対比のため、あまり声を張らない繊細でハイトーンな歌声のイメージが強かったけど、感情を乗せて振り絞るように歌う姿は明らかにRAYが新しい次元に進んだことを表していた。
全曲を終えた後のMCによると、最初の新曲は『夜来香迴旋』。最後の曲は『おとぎ』というタイトルとのこと。
夜来香といえば太平洋戦争中に李香蘭が歌った歌謡曲が有名だけど、もともと夾竹桃の仲間で強い香りを放つ花の名前らしい。いつか消えてしまう儚さのゆえに美しくかぐわしいものの象徴でもあるのだろう。そして「迴旋」とは「めぐり、まわる」こと。
イベントのタイトルに込められた「多年草」が指し示すメッセージは、愛は散っては咲くのを繰り返すというナレーションだけでなく、1曲目からすでに暗示されていた。さらに言えば、「See ya!」の歌詞もそうだし、フロンティアの「生きること それこそがLOVE」にも一脈通じている。
派手な演出やギミックはなくても、現体制ワンマンで最もコンセプチュアルで、一貫したテーマを表現しきったライブだった。
MCパートでは今後のイベントも多数発表された。「全部、花。花と歌い、死ぬ」という強烈に縁起でもないタイトルのワンマンショーが、年末の12月30日開催ということもあわせて、すこし胸がざわつくものがあった。
けど、その後にベルハーとのスプリットツアーや、5月の周年ワンマンなど、年明け以降の予定が発表されたことを胸を撫で下ろした。二丁魁の周年ワンマンとも日程かぶらなさそうなのも安心。
全15曲、約90分のワンマンライブがあまりにも一瞬で終わってしまった。もっと長く見ていたかった思いもありつつ、あえて極限まで追い込むようなライブではなく、最初から最後まで集中して全力を尽くせる長さに納めたのは、アンコールなしの潔さも含めて英断。
内山さんが繰り返し語ってくれる、できる限り長くRAYを続けるために何でもする、という言葉の本気さがパフォーマンスからも伝わってきた。内山さんを支えるために何でもします。Perennial。
愛海さんが復帰して5人体制に戻ったRAYがここからどんな物語を見せてくれるのか、大いに期待しています。どんな期待も今のRAYは必ず超えてくれる確信がある。