『lyrical school × 二丁目の魁カミングアウト 2man LIVE』

11月16日
『lyrical school × 二丁目の魁カミングアウト 2man LIVE』@代々木LODGE

 リリスクと二丁魁、あまりにも最高が約束された組み合わせのツーマン。しかもお互い60分ずつの長尺で、さらに会場は自宅からほど近い代々木LODGE
 ここは以前、ザーザズーというライブハウスだった頃、Melt-Bananaや沖縄のバンドBLEACH、それからミドリマヒルノなど数々の忘れられないライブを見にきた思い出深い会場ということもあり、開催が発表された時からテンションと期待が上がりっぱなし。ただ家から近いだけでは、山野ホールの日曜朝からやってるよくわかんないイベントとかではこうはならない。


二丁目の魁カミングアウト

 横に長く柱もある上に、ステージを側面から見る場所もあるかなり変則的な作りの会場で、なるべく見やすい位置を確保しようと正面付近の柱ぎわに陣取ったものの、メンバーが登場したら天井から吊るしてるスピーカーで演者の顔が隠れる場所があって笑った。
 その一方、この会場やけにボーカルの音声がクリアに聴こえて、ちょっとした歌い方のアレンジなどが手に取るように聴き取れた。特に栄心くんが顕著で、『ひふみよ』の「運が良ければ」の巻き舌みたいな歌い方、初めて聴いた気がする。

 『あの頃、僕ら若すぎた青春』以降の新しめな楽曲と、それ以前の楽曲が半々くらいの構成。今の二丁魁を見せる一方、リリスクをはじめとする楽曲派の面々としのぎを削りあっていたあの頃ぶりになるようなヘッズの人たちにもやさしいセトリだったのでは。

 あの青春の紅さんのロングトーンで、歌の途中から歓声と拍手が起こって、そのまま喝采に包まれながらアウトロを迎える理想的なリアクション。曲やパフォーマンスをしっかり受け止めてダイレクトに反応してくれる現場は本当に良いな。

 まさかとは思っていたけど、本当に60分間、MCも水分補給もなしでノンストップだった。最後の告知MCの間、ミキティーが両膝に手をついて真夏の高校球児みたいになってたし、全員しゃべる内容がおぼつかなくなってた。二丁魁には二丁魁の意地や誇りがあるのだろうけど、せめてお水はちゃんと飲んでほしいなあ。心配になってしまうので。これは客席でモッシュや圧縮が起こると演者が心配になるから、という理由で観客側のルールができたのと同じ理屈ではないかと考えております。

 いずれにせよ、60分間の怒涛のライブが終わった後、おそらくヘッズの女性が発した「すごーい!」という声が全てを表していた。すごい。本当にすごいよ、二丁魁。


Lyrical School

 主催側とはいえ、あれだけのパフォーマンスを見せられたリリスクはどう受けて立つのかと思ったら、二丁魁が沸かしまくって煮えくりかえった空気を、心地よい温度にあたため直す源泉掛け流し温泉の湯守のような絶妙な職人技を見せつけられた。

 リリスクの対バンライブはわりとやる曲が決まっている印象があるのだけど、この日はふだんあまり聴けない曲もふんだんにやっていて、60分間のうちに様々な表情を見せるとてもドラマティックなライブだった。二丁魁が1本勝負の長編で、リリスクはショート・ムービーのオムニバスという印象。
 中でも『ユメミテル』を聴けたのが嬉しかった。malikくんの歌声、アイドル界ではフィロのスのマリリちゃんと並ぶ二大脳トロボイス。現体制のフィロのスとリリスクの対バン見たいよねえ。おれは二丁魁、リリスクとフィロのスのスリーマンをO-eastで見る夢を諦めていないからな。

 リリスクのライブをそこまで追いかけられているわけではないけど、それでも見るたびに好きなメンバーが増えていって、気づいたら全員好きになってしまった。
 今日でいえば、クールなイメージのあったhanaちゃんが『moonlight』でにこにこレス送ってくれてドキドキしたし、エンディングのクロストークの間中、sayoちゃんがずっと満面の笑顔でとてもかわいかった。顔に太字で「楽しい!」って書いてあった。

 このクロストークがまたすごく良くて、リリスクの曲間MCでminanちゃんが「楽屋で二丁魁さんたちと話してたんだけど、ツーマンは初めて」と話したのを、「2018年に新宿LOFTでやってる!」と客席から訂正されてた件について、「"現体制では初めて"だったみたいですね」とふられて、ぺいちゃんが「そうですよ?」と自分は最初から知ってました顔してて笑った。
 「長く続けてるとそういうこともありますよね」という紅さんのフォローも優しさとリスペクトに溢れてて、これがくれちゃんの美徳。
 minanちゃんは二丁魁のライブを客席広報の関係者席で見ていたそうで、フロアに背を向けたままパフォーマンスする『強くやさしくなりたい』で、メンバーの背中に向けて振りコピするおなカマとステージ上の信頼関係を感じ取ってくれていた。この感性と言語化能力がminanちゃんの美徳。

 11月16日が忘れられない記念日になるような、ぶっちぎりで今年いちばんのライブだった。
 ただひとつ不満があるなら、こんなに最高のライブがキャパ200人くらいの会場で、しかもソールドしなかったことだけで、本来なら渋谷Wombあたりで完売してなきゃおかしいだろと思っていたら、ぺいちゃんが「次はオールナイトでやろう!Wombとかで」と言ってくれて、つい歓声が出た。絶対やろう。ここ数年、オールナイトイベントのあとは数日間、体調が戻らないからカウントダウン以外は避けていたけど、この2組なら万事繰り合わせて行きます。
 


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