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日記:20231225〜朱雀門出『第八脳釘怪談』〜
朱雀門出『第八脳釘怪談』読了。
kindleで購入した自費出版の電子書籍。自費出版と出版社からのリリースを往復するシリーズも8冊め。
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どこか茫洋とした人を食った味のある怪談が持ち味で、情報量の省略の仕方が独特。創作物の文章としては稚拙に感じられそうなぶつ切りの表現も散見するけど、怖さや不気味さを際立たせるための技法としてあえて狙っているようにも思える。
すこし気になったのは、あえてモチーフの類似する話を並べる構成でありつつ、それとは別に長い塀が続く一本道や、綺麗な顔をした謎めいた人物、という似通ったシチュエーションが複数の話に登場すること。人の頭で考えたとは思えない支離滅裂な不気味さが特色なのだけど、表象の手癖のようなものが垣間見えてしまった気もする。
直接的な死や霊を描いたものより、『レポーター』『目を瞑って歩いている人とその友人に聞いた話』のような、不思議な手触りの奇談が印象に残る。『宇宙は茸を嗜好する』は不思議どころではないやべえ話だった。奇妙な哀しみを帯びた『名前を落とした話』も好き。