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谷根千彷徨日記

9月22日

 谷根千界隈をお散歩。
 まずは根津の『八代目傳左衛門めし屋』で昼食。豚しゃぶ温野菜定食をいただく。お野菜たっぷりでヘルシーながら、ちゃんとボリュームもあって美味しい。

 おなかを満たして弥生美術館へ。開館40周年記念展『高畠華宵が伝えてくれたこと』を見る。東京中でここがいちばん好きな場所かも。
 華宵先生の絵だけでなく、インタビューなどで遺した言葉も展示されており、そのひとつひとつが心の深いところを刺激してくる。

私はすべてのご婦人方に対して
それぞれの美しさを
見逃しはいたしません。

高畠華宵

私の好むのは、人間としての女ではなくて、美の所有者としての婦人です。

高畠華宵

私がもし少女だつたら、要するにそのすべてでありたいのです。

高畠華宵「いろいろな少女に」『少女画報』

 同じ施設には竹久夢二記念館も併設されているのだけど、モデルの女性たちを愛人として性愛の対象にし、自分好みの女として染め上げようとした夢二と、華宵が終生描き続けた理想の美の所有者である少年・少女たちへの向き合い方があまりに対照的で興味深い。高畠華宵が同性愛者だったこともあるのだろうけど。
 華宵が少女(少年)たちの美に向ける眼差しの純粋さ、嘘偽りのなさ、届かないものへの憧憬の切なさに、すこし涙が出そうになった。
 高畠華宵的・少女画報的世界観をコンセプトにしたアイドルグループを誰か作ってくれないものか。語尾はですわで統一して。

 弥生美術館の次は、とりもちうずらさんの個展『とりもちアパート』へ。デイリーポータルZなどで発表している家電のぬいぐるみを中心に、ギャラリー内をアパートにしてぬいぐるみ作品を展示。かわいさと無意味さと熱意のバランスが素晴らしい。
 お子様連れの入場客も多くて、「ほら、これ全部ぬいぐるみでつくってあるんだよ〜」というお母さんの言葉に、お子さんが「なんで?」と直球の質問をぶつけていて、一瞬静寂が訪れていた。
 お土産にミニクリアファイルを購入したら、物販購入者にはポストカードを5枚プレゼントするので好きなのを選んでください、と言われて耳を疑った。サービスが良すぎる。
 とりもちさんの代表作とも言える、妖怪着ぐるみの化けわらじさんのお写真も撮っていただいた。舌が可動式で近くで見ると本当に手がこんでる。


 ギャラリーのすぐ隣にかわいいパン屋さんがあって、我慢できずについ購入。かにさんパンの中身はカニクリームというのも珍しい。
 一度パン欲に火がつくと自分を抑えられなくなり、ギャラリーの道すがら目についたパン屋さんをハシゴして、合計3軒で6個のパンを買った。

 移動中、路地に猫がいて写真撮ろうとしたら、すぐ上の電線に鳩が大量に止まっていて、地面が糞だらけだった。これは猫をカメラに収めようと立ち止まった人間に糞を落とすために猫と鳩が結託したトラップなのでは。

 ぽつぽつ雨が落ちてくる中、近くの公園でぼんやり時間を潰してから、予約しておいたカヤバ珈琲へ。これまで何度か飛び込みで行ってみて、毎回満席で断念していた。最初から予約していればよかった。
 看板メニューのたまごサンドと、オリジナルメニューらしい「ルシアン」を注文。ルシアンはウクライナの飲み物で、コーヒーにチョコレートを入れたものだとか。うーん、独特。たまごサンドはパンに甘味があって美味でした。ゆったり読書しながら贅沢な時間をくつろがせていただいた。2階席にも行ってみたいのだけど、ひとり客だと難しいのかな。

 ひさしぶりに根津界隈をお散歩して、時間が穏やかに流れる良い一日を過ごしました。

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