日記:20231112〜ひだりききクラブ〜
昨日、文フリで購入したひだりききクラブのおふたりの作品集を読んだ。
すずめ園『ヒペリカム』。エッセイ3本と自由律俳句、写真を配した作品集。エッセイはどれも力作で、なかでも「二十七周年」と題された、誕生日を迎える心境を綴った文章がとても良かった。
過去の自分を見守るこの感覚、とても好き。こういう感覚を持っている人にたまらなく惹かれてしまう。
自分にとっては常に過去は恥でしかないのだけど、積み重ねてきた恥の中に一筋の純粋さのようなものがあり、それが今の自分を構築しているのだとしたら、今の自分に胸を張れることが過去の自分を救ってあげることになるんだろう。
自由律俳句では、ほんのり艶めいた恋愛の香りが漂っている作品にすこしドキドキした。すずめさんの句には今まであまりなかった要素だった気がする。
最後のエッセイの舞台になっているドトールは、もしかすると以前ケンタッキーだったあそこかな。つい最近、トイレを借りに寄ったところ。
出雲にっき『ハムスターの背骨はゆるやか』
エッセイと自由律俳句を中心に、詩や散文と写真を収録した1冊。写真と本文のレイアウトも凝った造りになっている。
作品の形式は自由で多岐に渡っているけど、「プロローグ」で示されているように、全体的に私小説性が強く、にっきさんの今がストレートに記されている。
母親のお下がりの服にまつわる文章がとても良かった。洋服とともに母親の体験した過去も身に纏いながら、自分自身の新しい思い出を刻んでいくための勇気や後押しをもらっている関係性が、とても尊く愛おしい。自分には洋服への愛着も肉親との絆も無縁なので、素直に羨望を感じた。
特に好きな自由律俳句はこちら。
「朽ちてゆく葡萄」という文字の美しさが圧倒的。
この短い句で優しさの持つ温かみや柔らかさが込められているのが素晴らしいし、「着膨れている」という表現には、ほんのすこしだけ優しさを受け止めきれずにいる困惑も込められているような気もする。素敵。
状況を読んだ句でありながら、「光」「透」という文字が、手紙の相手やどんな意味を持つ手紙だったかを連想させて、物語が広がっていく。
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