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05.12

今日はいつもよりすこしはやい午前6時30分に起床。ガバッと上半身を起こし、ベッドから半分ほどずり落ちた掛け布団を眺める。そして就寝中の無意識のぼくと掛け布団との壮絶な戦いに思いを馳せる。おそらく一進一退の攻防が続いたのだけれど、ずり落ちた布団を見る限りでは最後の最後でぼくの方に軍配があがったのだなと推測する。
「あぁ、そうか。これが原因だったんだ。」とふと自分の中で点と点がつながる。というのも最近(そんなことない。)寝起きがすごく疲れているということが多かったから、その原因は何だろうと朝起きたときに考えることがあったのだ。夜な夜な熾烈な戦いを掛け布団との間で繰り広げていたから、朝目が覚めたときにからだ全体がぐったりしているということか。いうなれば、これは戦いの代償というわけであって、夜な夜な歴史に名を残すであろうこの世の誰もが知り得ないごくごく小さな戦いをしているのだ。そう考えると、朝起きたときのじぶんのからだ全体で感じていた"つかれ"への説明がつかないように思う。

「とりあえず、戦いの果てに疲れ切ったからだにご褒美をあげよう。」

そう思い立ち、オールブランが待つキッチンまでベッドを飛び降り颯爽と駆け出した。
時刻は6時45分。
1日はまだはじまったばかりだ。


1日の終わりについた嘘

最寄駅の改札を出たところにDONQがある。いつもはお店の外から陳列しているパンを指をくわえて見ているだけだったけど、今日はかなり疲れきっていたため、どうしても甘いものが食べたくなってしまっていた。そんなことだから気がつけば、ミニクロワッサンなど小さな一口大のパンを量り売りで買える知る人ぞ知る大人気コーナーの購入を待ち侘びる行列の最後尾に並んでしまっていた。先陣を行くは4人の豪傑たち。「◯◯と◯◯を5個ずつ」、「◯◯を14個」と店員さんに各々の要望をさらっと伝えることができるこのスマートさ。ぬかりがない。おそらく歴戦をくぐり抜けてきたんだろうな(おそらく仕事帰りに寄ってついつい買っちゃってる)とひとり行列の最後尾で感心する。そんなことを思っていたら、すでに豪傑たちは目の前からいなくなっていてぼくの注文する番がやってきた。実はだ。ぼくというのは優柔不断なので、一つのパンを選ぶという一見簡単なことでもなかなか時間がかかってしまうのだ。ただ、今日はいつもと違った。季節限定のくるみとレーズンのパンがあったからだ。はじめてレーズンと出会ってからはおやつの時間にレーズンをねだってしまったり、小学校の給食の時間にごくたまに出てくるブドウぱんを心待ちにしていたりとぼくのなかでレーズンというのはなくてはならないものであり、これからの人生を生きていく上での大切な友人だった。そんな友人であるレーズンが陳列窓から大人しくぼくのことを見ている。そんな気がしたからか、今日購入するパンは実は並んですぐに決めることができていて、思わずマスク越しにひとり笑顔になってしまうほどの余裕を醸し出すことができていたのだ。そして店員さんに届く声で落ち着きを払いつつ注文する。

「くるみとレーズンを100gください。」

「ご注文は以上ですか?」

「あっ、ミニクロワッサンも100gおねがいします。」

ミニクロワッサンについてはあえて触れない。
「隣の芝は青い。」という言葉があるように、やはりミニクロワッサンも美味しそうに見えてしまったから、ついつい買っちゃったんだろうな。
いやいや、おそらく数々の豪傑たちも踏んでしまったであろう店員さんが敷き詰めていた巧妙な購買意欲という名の罠を踏み続けてしまったためについつい買ってしまったんだろうか。
そして、お会計の時にタイトルにあげた嘘をついてしまったのだ。

「マイバッグはおもちですか?」

「大丈夫です。持ってます!」


いや、正式には持っていない。
社会人になってから、
「エコバックを常に持つことこそが紳士であり、社会人といえるだろう。」
そんなことを今の会社の上司に教えてもらってからは常にリュックの中にエコバックを携帯するようにしていたのだけれど、あいにく今日は忘れてしまっていたのだった。
「えっ、通勤で使っているリュックの中に入れて帰ったらいいのでは?」と言われそうな気がするので、あくまでぼくの見解を言っておくと通勤リュックはマイバッグではない。
これはマイリュックだ。

だから店員さんにマイバッグをお持ちですか?と聞かれたときに実際はマイバッグを持っておらず、マイリュックしかなかったぼくにとっては、店員さんの問いに対して「YES」で答えてなんかいけなかったのだ。
嘘をついてしまった。
店員さんはどう思ったのだろうか。

その嘘に気づいたのは、バスに乗って戦利品であるパンを眺めているときだった。
パンを食べるじぶんを想像してマスク越しに笑顔になっていたのだけれど、その笑顔はもろくもどこかに消え去って、自分がついた嘘について真顔で考えはじめてしまっていた。

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