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1.1

新年を迎えて早々の5時に起床。
そのまま枕元で充電していたスマホからradikoをつけると、5時から放送開始していた田中のえさんのweekend plusを聞きはじめる。

新年を確かに迎えたはずなんだけれど、いつものラジオをいつもの時間に聴いているとそんなことはなかったんじゃないかとも思う。

でも、ラジオから流れてくる初日の出のお知らせを聴いているとぼくは確かに新年を、2023年を迎えたんだなと思い知る。

そして新年の記念すべき一曲目である緑黄色社会の「始まりの歌」が流れはじめた。

緑黄色社会さんのなかではいままで聴いたことはなかった一曲ではあったけれど、
いろんなことがはじまっていく今日だからこそ聴くのにピッタリの曲だなと思い、
気がつけばまだ太陽が届かない暗い部屋で一人イヤホンを通して静かに聴き入ってしまっていた。

そうやって新年早々ラジオに聴き入り、ぼんやり過ごしていたらどうやら初日の出を見ることができる時間が近づいてきていることを知った。

時刻は6時。
せっかくだから初日の出を拝んでみようか。

そう思いたつと、引き出しからランニングウェア一式を取り出し身に纏う。
おそらく初日の出を見ようと思っているあの場所にはたくさんのひとがいるだろうからマスクも忘れずにポケットに入れる。

スマホを胸ポケットにしまいいれると、イヤホンを片耳に改めてしっかり差し込み、玄関ドアを開ける。

まだまだ暗い。
けれど、確かにぼんやりとオレンジ色が明るくなってきているのがわかった。

とりあえず朝の冷え切った空気を肺いっぱいに吸いこむと、頭が冴え渡っていくのがわかった。

そうしてまだ眠っている静かな街を一人走りはじめた。

時刻は6時10分。
初日の出まではあと50分ほどだった。


ぼくが初日の出を拝もうとしている場所は、ぼくの足でいけばここから10分もしないうちに着くだろうから、まずはいつものランニングコースで山の麓の神社まで走ることにした。

走りはじめてそうそう足が、からだがぼくに語りかけてくる。

「走れそう?大丈夫?」

「うん、最高。ありがとう。」
そうやってとりあえず心の中で言葉を返す。

実際休日にはかなり走り込んでいたからかすごくすごく体が軽かったし、気持ちよかったからか、走りはじめて15分ほどで目的の神社に到着することができた。

息は上がっていないけれど、少し呼吸は乱れている。

太陽の明るさが届きかけている山の麓の薄暗い境内には、まだわずかな灯籠の明るさと早朝の誰もいない静けさ、それとぼくの呼吸の音だけがそこにあったように思う。

すごく神秘的だなと思いながら、境内の階段を一段一段登りはじめ、大きな拝殿の前に立つと今年初の初詣を行う。

10円玉を投げ入れ、鐘を鳴らし、二礼二拍手一礼をする。
願い事はけっして声には出さず心の中で留めておく。

一礼まで終え、手元の腕時計を見ると時刻は6時30分を過ぎたところだった。
ここから初日の出を拝む場所まで30分ほどかかるので、これ以上遅れると最悪初日の出に間に合わない可能性もでてきた。

とりあえず神社を後にすると、目的地まで駆け出した。
麓にひろがるぼくの住む町にだんだんと太陽の光が届きはじめ、明るさがいよいよ本格的になってきていた。

いよいよまずくなってきたと焦りを感じはじめたぼくは、駆ける足をよりはやめた。


そうして初日の出を拝める当初の目的地に着くことができたのは、6時55分だった。

ここから初日の出を拝むための最後の難関である心臓破りの鬼の階段(ざっと100段くらい)を登り切らないといけなかったのだが、走るうちに次第にからだがあたたまっていたぼくにとって登りきることは容易だったように思う。

けれど、登りきった時には完全に息が上がってしまい、もう2度と登るかと階段に対して愚痴をこぼしてしまったけれど、その後すぐに訂正した。ごめんなさい。

登りきった広場に着くともうそこにはたくさんの初日の出を待ち侘びるひとでいっぱいだった。家族連れ、友人と、カップル、ご夫妻で。

こうやって初日の出を誰かと拝む、その瞬間を共有するっていうのもいいなとその場にいて少しだけ羨ましくなる。

じゃあぼくは誰と拝みたいんだろうかとふと考えたときに、やっぱり共有したいひとはあの人しかいないなとぼんやり思う。
ぼくの中でも確かに共有したい人が確かにいたことはとても喜ばしい気づきだ。

そして時刻は7時5分。
ラジオから大阪の初日の出の時刻を聞いてから、ここまで20分ほど誤差があったのだけれど初日の出時刻として発表されていた時間を迎えたのだけれどまだ太陽は出てきてくれなかった。

その時のぼくは、走り込んできたことによりからだ中が熱くなり一人からだから尋常ではないほどの湯気がたっていたので一刻もはやくこの場から立ち去りたかった。

けれど、後少しで太陽が出てきてくれる。
その瞬間をただただ待ち侘びた。


時刻は7時15分ごろ。

ようやく太陽がでてきてくれ、初日の出を拝むことができた。
あぁ、太陽ってこんなにもオレンジ色で輝いているんだなとすごく感極まった。
ずっと見ていると、太陽の形が目の中にのこるこの感じの眩しさ。

ぼくはよく写真に残せないと感じたときは、写真を撮らないようにしている。
その瞬間を1秒でも長く見つめていたいからなんだと思うけど、おそらくそうなんだと思う。

だから、スマホのカメラを立ち上げたけれど、シャッターボタンは押すことなくそっと電源ボタンを押してポケットに仕舞い込む。

そうやって家までの帰り道を駆け出していった。

時刻は7時20分。
ぼくが走る町にはすっかり太陽の光が届き、いつもの日常がはじまっていた。
でも、今日はいろいろなはじまりの1日であるから、この太陽の明るさというのも少し特別なんだろうなと今はそう思う。


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