大麻グミ事件の全て②
留置場の部屋を出るとまた手錠と腰縄をつけられる。
これが地味に病む。
脱走防止の為の処置だろうが自分には自由が無い事を痛感させられる。
マトリのワゴン車に乗せられて両隣を挟まれてサンドイッチ体制で移送。
検察に到着し検事との面談を待つ、待つ、ひたすら待つ、が一向に事が進まない。
ようやく対面を果たしたのは到着からおよそ5時間後。
そうして検事と話した内容は
「あなたにはHHCおよそ7kgを販売の為に貯蔵したという逮捕事実がありますがこれについて話すことはあるか?」
「私が販売していたのはHHCHでありHHCを貯蔵販売した覚えは一切ありません。その他については何もお話しする事はありません。」
これだけだった。
10分も立たずに書類に判子をつかれそのまま裁判所へ移送される。
裁判所でも同じ様な流れだった。
15時過ぎに裁判所へ着くが裁判官と対面したのは夜7時半過ぎ。
自分の件は最後に回されたらしい。
同じ事を聞かれて同じ事を答え、書類に判子をつかれるだけ。
この数分の形式の為だけに自分は1日拘束されたのか。
分単位で働いていた普段からは考えられない無駄だなと思いながらもここでは何一つ権限が無い。
形式の作業が終わると再び車に乗せられて拘置所へと向かう。 時刻はすでに夜8時を超えていた。
本日の目的地である大阪拘置所、通称大拘へ到着。
ちなみに留置場は入ると言うが拘置所は入所らしい。
ここでも到着後すぐに服を脱ぎ全裸で点検。
やはりけつの穴を広げて見られる。
ずっと我慢してたのでおなら出た。
こちらの粗相には一切反応をせず淡々と入社の手続きをこなされる。
流石はプロ。
拘置所でのルールを口頭で説明されて薄緑の服に着替えさせられて独居へと連行される。
初めてだったのもあり自分が入ったのはたしか第二種独居という部屋。
写真と少し違うのは床がフローリングで天井には監視カメラ付きの部屋。
留置場よりは設備が整ってて少し快適かな。
今日から20日間はここで過ごすのか。 そう思いながらシミだらけの臭くて重たい布団で寝た。
拘置所1日目。
夜9時に寝た為朝7時半の起床チャイムの前に目覚める。
10時間半も流石に寝れない。
起きて部屋の掃除を済ませて点検に返事をする。
ここでは自分の名前は無い。
2085番という番号で呼ばれる事になる。
朝食を終えて寛いでると刑務官から「2085番調べ!」と呼び声がかかる。
部屋を出て長く複雑で無機質な廊下を歩き指定された所に着くとそこには自分を逮捕したマトリが待っていた。
「松本さんおはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
落ち着いた声だが目が笑ってない。
適当に返事をし相手の様子を伺っていると本題に入ってきた。
「それではこれから取り調べを始めます。あなたには黙秘権という権利があります。話しても話さなくても結構てます。まずは出身地や経歴を話してもらえますか?」
当然だが自分は何も答えない。
「黙秘ですか。それでは黙して語らずと書いときますね」
このやり取りが何度か続き相手は自分が何も話さない事を理解したのか雑談に切り替えてきた。
拘置所2日目〜19日目
昨日の調べは朝と昼で約4時間。
確認したが昼と夜ご飯の時間は避けてくれるそうだ。
ありがたい。
終始雑談をしてくるがこちらから質問しても自分の事は答えないスタイル。 相手側にも段々苛立ちが募るのが見て取れる。
もう1発と思い「雑談しかしないならもう呼ばないでもらえますか?」と言ってみる。
するとこの日以降、調べの時間が激減する。
自供は取れない事を理解して証拠からの尋問スタイルに切り替えたようだ。
マトリが来るのは週1回になり一度の調べの時間はおよそ30分。
この日以降劇的に暇になる。
1日12時間の余暇時間と10時間半の睡眠時間、これが拘置所の1日だ。
1日に差し入れ可能な本は1人あたり3冊、食品に関しては合計5点まで。
3畳の部屋で24時間を過ごさないといけないので必然的にひたすらに本を読む事となる。
拘置所生活初期で読んだのは、検察に起訴されたが無罪を勝ち取ったプレサンス山岸社長の負けへんで、村木厚子氏の私は無罪です、八田隆氏の勝率ゼロへの挑戦など。
自分を勇気づける本を中心に読んでいた。
そうして拘留期限最終日の20日目を迎える。
3部へ続く〜