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まだ第8週目くらいの人生

いまさらながら、「虎に翼」を観始めた。

今回の朝ドラはいいよいいよ、と聞いてはいたが、意外と毎日15分を継続して観るのは難しいもので、ずるずる観ないで来てしまった。だが、少し早起きをした平日休み、たまたま観た回で主人公の友人らしき男が、同性の恋人を紹介するという件があり、一気に興味が湧いたのだ。朝ドラでゲイの登場人物が出るなんて。

最初はそんなインパクト入りだったものの、最初から観ると止まらないくらい面白い。伊藤沙莉はもともと好きな俳優だったが、本当に堂々たる主演ぶりだなぁと。竹を割ったようなさっぱりした寅子の性格が、イメージとすごく合っている。そして大好きな仲野太賀も出ていて、優三さん出てくるたびにキュンキュンしちゃう。石田ゆり子のお母さんもいい。

内容としては、日本初の女性弁護士となった猪爪寅子の生涯を描くというもの。まだ途中までしか観てない自分が知ったかぶって語る資格はないかもだけど、戦前から始まる話なのに、全然今の社会背景とも照らし合わせられちゃう。これはドラマとして良くできていると取るべきなのか、社会のあまりの進歩の遅さを嘆くべきなのか。

女性の社会進出が当たり前じゃなかった世の中で、寅子や周りの女性たちを襲うのは、女性に対するステレオタイプの偏見の数々。どのエピソードをとっても、近場で、ニュースで最近も見聞きした話。まだまだ圧倒的に男性が優位なこの社会で男として生きている自分が女性に対する理不尽な仕打ちに憤慨して観ているのは、分かったつもりの上から目線の共感なのだろうか。

寅子の大学の友人として、よねという女性が登場する。一匹狼で、周りの女性たちとも全く馴れ合う姿勢も見せない彼女は、いわゆる「男勝り」なタイプ。彼女のこれまでの背景や想いを知るうちに、徐々によねのことを応援したい気持ちになってくるのだが、今まで僕は、よねのような色んな枠から飛び出そうとした人に対して、「大人しく適切な振る舞いをしていればいいのに」と思ったことがなかったと言えるだろうか。いや、言えない。

女性初の弁護士として、期待を背負った寅子が、常に正しく周囲からの期待に応え続けようとして押しつぶされそうになったとき、優三からかけられた言葉、「常に正しい人なんていないから
」。グッときて泣いてしまった。いつだって正しく、利他的になれないのが人間だけど、誰かの進む道を笑ったり邪魔したりする人間にはなるまいと、観進めるにつれ思わせてくれる。

そして「虎に翼」、物語の進むペースがめちゃくちゃ早い。法の道を志して、弁護士になるまでの紆余曲折をじっくり描くのかと思いきや、現在僕が見た第8週までで、1つのクライマックスを迎えようとしている。もしかしたら、人生ってそういうもんかも。ここが一種のピークというか、もう大きなことは大して起こらないだろうというところから、ひと山もふた山もあるというか。年齢的にも、僕の人生もまだ第8週くらいなもんなのかもなぁって。それなりに歩んできたと思ってた僕の人生がギュッとダイジェストされて、まだ重要な局面がたくさん残ってると思うと、ワクワクするような、勘弁してよとため息が出るような。とりあえず、なんとか早く本放送まで追いつきたい。

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