桜木花道になれなかった全ての人へー自分を形作ってくれた5つのマンガ
マンガアプリ『アル』とnoteのコラボ企画『私を構成する5つのマンガ』。
たった5つ、結構酷だ。せめて20くらいにしてくれないかなと思いつつ、脳内会議で厳選した5つのマンガを振り返っていきます。しばしお付き合い頂けると嬉しいです。
私を構成する5作品がコチラ。
①魔法陣グルグル
小学生時代、ジャンプでもマガジンでもコロコロでもボンボン(懐かしい!)派でもなかった僕は生粋のガンガニスタ(ガンガン読者)。中でも1番好きだった作品が『魔法陣グルグル』です。
僕の中では「面白い」の原点、それがグルグルです。中でもキタキタおやじ(本名:アドバーグ・エルドル)の印象が強すぎてなぜかもう似顔絵が得意になりました。いつでも絵描き歌のように描けます。
中でもキタキタおやじがワキの下でおにぎりを作っているシーンは驚愕でした。そのシーンを読んで以来、コンビニのおにぎりを見たとき「ひょっとしてこのおにぎり、オヤジのワキで作られてたりしないよな、、、」と脳裏をよぎることがしばしば。それくらい、深く印象に残っている作品です。
第1期のアニメも夢中になって観ていました。当時小4だった僕、忘れもしない木曜日の夜7時半(8時だったかな?)毎週テレビにかじりついて見ていたにも関わらず、うっかり見逃してしまった回がありました。僕は悔しくて泣きました。今でも時々思い出す、オヤジがワキで握った塩むすびのような苦い青春です。
②G戦場ヘブンズドア
僕が1番好きな作家さんである日本橋ヨヲコ先生が描かれた、魂レベルで全国民にお勧めしたい一冊です。マンガ家を目指す高校生達の友情物語。全3巻ですがその内容は驚くほど濃いです。
本作に登場する「あなた達は、まだ本当には弱ったことがない子だって言ったの」「もう堺田ちゃんには、安全地帯でいる貴方達の言葉は届かないわよ」というセリフがあるのですが。※堺田は本作の主人公です。
この言葉は僕の中にある種の呪いのようにつき刺さっていて、守られた安全な状態から発する言葉では、本物の覚悟を持っている人間のそれには敵わないのだと、作品を読み返す度にヒリヒリした感情が駆け巡るのです。
最終的に本物かどうかを決めるものがいったい何なのか、1つの正解を『G戦』からは教えて貰えた、そんな気がしてます。
③『少女ファイト』
こちらも『G戦』と同じく日本橋ヨヲコ先生の作品です。好き過ぎてレビュー記事を『アル』で書かせて頂いたのでよかったら是非ご一読ください。作品に対する想いは全部そこに置いてきました。
僕が1つ決めていることは、この作品は絶対に最後まで見届けたい、ということです。彼女達がどんな結末を迎えるのか。日本橋ヨヲコ先生が丁寧に、丁寧に紡いで描かれている奇跡のような作品です。作中に出てくる言葉の数々がいつだって自分の指針となってクラピカのジャッジメントチェーンのごとく心の臓につき刺さってくれているのです。(分からない人はHUNTER×HUNTERを読んでね!)
雑に生きてしまいがちになることがある度に、この言葉を思い出してます。
まだ読んでない方、人生の楽しみがひとつ増えましたね。
④ハイキュー!!
僕は高校時代バレー部だったので、バレーマンガと聞くとほぼ無条件に手に取る傾向にあるのですが、ハイキュー‼︎を手にするまでの自分のベストバレーマンガは『リベロ革命!!』でした。
奇しくもタイトルの語尾『!!』が同じで何か運命めいたものを感じます。
バレーボール経験者としての目線で見て『ハイキュー!!』はとんでも技も登場するんだけれども現実離れしていない(し過ぎていない)点が素晴らしいなと思っていて、バレーボールというスポーツの面白さをあそこまで最大限、経験者にも未経験者にも等しく届けられるのがシンプルに凄いな、と。
バレーボールってとにかく一瞬一瞬状況が変わるスポーツなので、ものすごい頭を使うスポーツなのですね。で、サーーーーっと流れ行くその1プレー1プレーを、プレーヤーの思考を載せつつコマで「言語化」して見せるのが圧倒的に上手いのです。
自分でも、あ、バレーボールってこんなに面白いんだ、と再発見するくらいの、そんな圧倒的描写力(心理面込みでの)が面白さの秘訣なのかなと。
そしてもう1つ、敗者の美学とでも言いますか、僕が「ハイキュー!!」を好きな1番のポイントはここです。
多分、皆様何かしらで『負けた』ことがあると思います。最後まで勝ち続けて終われる人っていないので。
で、僕も随分負けてきた人間です。高校の最後の最後の大会はベンチにも入れませんでした。僕は高校からバレーボールを初めたので、中学や、早い子だと小学校からバレーボールを始めた人達よりもスタート位置がだいぶ後ろでした。
周りのレベルにはてんで追いつけないし、全然うまくならなくて『もしドラゴンボールが集まったらあと20cm高く飛べるようにしてもらえたらなぁ」とか結構本気で願ってました。
それでも、下手なりに自分なりに一生懸命やってました。誰の目にも止まらない、記憶にも残らない。それでもバレーボール、やってたんです。
作中に登場するチーム烏野高校(主人公のチームです)の主将、澤村大地の中学時代の友達が地区予選の1回戦で烏野と対戦するのですが、彼らのチームは全くの無名の弱小校です。当然ながら、烏野高校には歯が立ちません。
会場にいる誰も、自分達のことなど目にもくれていない。それでも、対戦相手の烏野高校だけは、自分達に対して本気で向かってきます。一切の手を緩めることなく。
試合後、澤村とその友人が会話するシーンがあるのですが、そこで「オレもバレー、やってたよ」という描写があります。
大会では、1日で半数のチームが敗れさり、最後に残っているのはたった1チームだけです。たとえスポットライトが当たらなくても、皆バレーボールが好きで、きっと色々な楽しいことや誘惑もあっただろうに、部活に青春かけて頑張ってたんだよなぁと思うと、自分の経験も相まって、その描写が僕にはたまらなかった。そこには、勝ち負けを超えた、言葉では説明し切れない激しい感情があったんです。
⑤スラムダンク
最後はやっぱりこのマンガです。連載が終わって24年くらい経ちますかね。なんだろう、色あせなさ過ぎてちょっと怖いくらいです(笑)
本記事のタイトルにもなっている『桜木花道になれなかった全ての人へー」という話に繋がるのですが、スラムダンクの影響でバスケットをはじめた人は当時たくさん居たと思います。僕もその1人でした。
中学に入学すると同時にバスケ部に入学。県内でも競合と呼ばれるチームでした。小学校の時の昼休み、ずっと友達とバスケットをしていた時とは打って変わって、基礎練、走ってばかりの厳しい練習。僕はそこそこ背が高い方だったのでセンターとして練習することになり、激しく身体をぶつけ合う中で、まさに木暮君のセリフの「バスケットってこんなにキツイの?」状態でした。
練習のキツさに加え、僕は元々喘息持ちで、少なくとも月1くらいで学校を休んでしまうような身体の弱い子でした。今思えばスポーツの選択を間違えてるなと思うのですが、当時はスラムダンクに憧れていたのでバスケをする以外は選択のしようがなかったんですね。
キツイ練習を月1か多いと月3くらい休む自分を、チームメイトの何人かは快く思ってなかったのでしょう。もしくは、当時人とうまく喋ることが苦手だった僕は、明確な理由は今でもわからないのですが、次第にチームメイトから嫌われていきました。話かけても貰えない。パスも貰えない。1ON1の練習をしても空気のように扱われる。誰も自分をチームメイトとしては見ていない。人間として扱ってもらえない。大袈裟でなく、当時の僕はそう感じていました。
次第に、部活はおろか学校にさえ行けなくなりました。
ああ、自分は桜木花道にはなれなかったんだな。
自分の弱さが、純粋に桜木花道みたいになれるのではと思っていた滑稽さが、悔しくて、情けなくて、学校を休みがちで親にも迷惑を掛けていたので、体調が良くないとかなんとか言い訳をして、普通に学校にも行けない自分が嫌いすぎて、当時は人生で1番しんどかったなぁと振り返ると今でもちょっと泣けてきます。
結局、2年の夏からほとんど行けてなかった部活も(幽霊部員で席だけはあった)3年になって少しだけ練習に参加した事はあったのですが、結局関係が元通りになることはなく、3年の頭に正式に辞めてしまいました。
顧問の先生に正式に辞めることを伝えた時、そんなつもりは無かったのに、僕はボロボロ泣いてしまいました。イジメられていたことが悔しかったのか。自分へのミジメさがそうさせたのか。でも今振り帰ると僕は、桜木花道になれなかった悔しさで泣いていたんじゃないかなぁと思うのです。
大人になってスラムダンクを改めて読み返すと、昔あんなに憧れた桜木花道が、もちろんカッコよくて大好きなことに変わりはないのですが、もう昔抱いたような憧れの感情はなくなっていました。
むしろ、ずっとチームを支えてきた、特に秀でた才能のない平凡な選手だけど包容力の固まりである木暮君や、ヤンキー相手に「帰ってください」と言えるヤスの芯の強さに、「湘北に入ってよかった、、」と涙ぐむ山王戦のベンチに立つ1年生の石井君への共感だったり、そんなところに感情移入してしまうのです。
スラムダンクを読んだだけで高く跳べると思っていたあの頃の僕。
桜木花道になれなかった人生を生きている今の僕。
どっちの自分も地続きで、それを繋いでくれているのが『マンガ』ということを思うと『自分を構成する5つのマンガ』がTwitterトレンドで世界1位を獲得した理由を教えてもらえたような気持ちになりました。
ヒザに水が溜まって桜木花道の5分の1くらいしかジャンプできなくなった今の僕の人生も、おそらくまだまだ続くので、先にご紹介した5つのマンガに支えられつつ、また新しく自分を構成してくれるマンガに出会える日を楽しみにして生きていこうと思います。
長々とした文章に最後までお付き合いいただきありがとうございました!