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① 脳梗塞から回復している父が未来の世界に既にいる。だから今、「祝 御快復」


「八月一日の午後二時に父が倒れました。」という連絡を、
翌日の二日の午後五時過ぎにメールで受け取りしました。
写真が添付してあり、一夜が明けたところの父の姿がそこにありました。


時間感覚と体感覚がおかしくなって、何を考えればいいのか、何を感じているのかもよく分からない状態になりました。
そのメールのなかには別の事務的な内容が加えてあり、とりあえずそれにだけ答える形で返信をしました。
父のことは一切触れずに。


数時間後、父の写真をまた見たくメールを開くと、看護師さんの説明の音声も添付してあったことに気付きました。
何が原因ですがか、とたずねる家族に、
父の脳卒中がどのタイプであるかは今のところ分からないけれども、
これからまだ検査をしていきますと添えたうえで、
よくあるタイプの説明と、
手術はうまくいきましたがこの先二十四時間はどうなるかは分からない状態であることを言われていました。


この先二十四時間はどうなるか分からないということを伝えている言葉には、
そうなった時の心の準備をお願いします、の意が含まれていました。


境目でいる今、私に出来ること。
私がしたいこと。
そうだ、私も音声!
これだ、と思いました。
父へのメッセージを音声を撮って、聞かせてあげてもらおう思いました。
それまで何を感じればいいのかさえよく分からなかった私の心に、小さな灯りが灯りました。


状況が分かった今、音声を撮ろうと伝える言葉を考え始めたその瞬間、今度は急に涙が溢れてきました。
二十四時間以内の急変はあり得るという看護師さんの言葉が、さっきとは裏返って流れ込んできたのです。

深呼吸を何度かして、「私じゃない。父が聞きたい言葉。」と自分に言い聞かせました。
次に「望む未来は?」と自分に問い直しました。

父の気持ちが明るく元気になる言葉
眠っている父の意識に届く大きめの朗らかな声で

大丈夫?( 心配してるの意)なんて類の、私が主語の言葉は一切言わない
そう、主語はお父さん
私はいらないけれど、
お父さんが主語になると、それは私たちなんだから!

送れる容量もあるだろうし、ごちゃごちゃ長く話すよりも短く簡潔に

よし、決まり

「お父さん!のりこ、のりこやで!
お父さん、これからどんどん良くなるからな!
聞こえる?お父さん。のんちゃん。
お父さんは、これからどんどん絶対に良くなるからな!」

明るい未来百パーセントの声と言葉
お父さんにとっての光となるよう

撮り終わって、確認して急いで送ったあと、
それでもやっぱりまた、胸に、目頭にこみあげてくるものがありました。
そこで再び何度か深呼吸して、
お父さんが、お父さんの頭が、光に包まれている姿を思い描いて、
そこに温かな気持ちも吹き込んで、心の中でお父さんに送りました。

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