元気にしてるかな
南半球のこの国で春を迎えるのも二十年目です。
一番下の子はこの国の春に生まれました。
日本人にとって、春といえば桜がまず最初に心に浮かびますが、
コーファイ(Kowhai)の花も私にとっては春を想起させる花となりました。
芝生は枯れることなく年中緑なこともあって、
冬イコール茶色というイメージや、特に寒いというわけでもないので、
春の訪れに対して、そこまで感慨深い気持ちが湧くわけでもありませんが、
この国の春に生まれた一番下の子が、
去年成人を迎え、お隣の国に働きに行った、移ったことによって、
コーファイの花が咲き誇る姿や散った花びらを目にすると、
この春から何ともいない感慨深い気持ちを私の中に生み出す様になったのです。
ところで花が満開となった後に、葉が顔を出してくるところや、
花びらが地面のあちらこちらに散っているところなど、桜と似ている点があって何だか不思議です。
山吹色のコーファイの花をひとり見つめながら、脳裏には走馬灯が回っています。
この二十年の間に数回の引越しをしましたが、
それでも殆どを、今目にしているコーファイの木のある土地で暮らしてきました。
私自身の子供時代の全ては、日本のとある市ですが、
子どもと過ごした殆ど全ての日々は、ここにあります。
よく晴れた真っ青な空の下、
風ひとつない穏やかな日差しのなか、その美しさゆえに胸に熱いものが込み上げてきます。
若い頃は、美しいものは美しかった。
けれども歳を重ねてきた今だからこそ知ったことは、美しさは刹那さを内包しているからこそ美しいのであるということ。
複雑に入り組んだ心のひだ。
琴線に触れるのは、一緒に過ごしたかけがえのないあの日々。
私たちは桜を見ているのではなく、大切な人の姿を心に映し出しているのだ。
あの子が私のことして生まれてきたこと。
広大な宇宙での偶然で必然の邂逅。
次会う日まで、色鮮やかで温かな記憶を胸に抱いて進んでいこう。
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