記録 一日目
行動を記録する。
折角、"手帳"なのだから、手帳として使った方が良いだろう。
記録して置けば、次の目的も洗い出せる。
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交渉記録
〇魅了草×1 と 糸×2 の交換
(#34 イヴ)
街の跡地で糸を探していた際に、相手側から接触。
交換物品はこちらの提案で良いとの事。
価値はわからないが、魅了草を提案したところ、承諾を受ける。
また何かあったらよろしく。
そう言っていた。
何かあったとき、相談してみても良いのかも知れない。
手にした糸に、この星に生きた人々の記憶は、見えない。
行動記録
〇川辺での釣り
糸を入手し、釣り竿を作成する。
他の復興者を真似て、川辺に糸を垂らせば、魚や長靴が釣れる。
成程。
釣りを娯楽として語る上官を見た事が在るが、少しわかったかも知れない。
釣り糸を垂らしているとき、不意に声を掛けられる。
契約記録
〇カモノハシと写真
(#138 鴨鹿 ももか)
カメラマンと称する女性が、接触。
異星の生命体であるこちらの生体に興味を持った模様。
害は無いと判断する。
名称を記録…鴨鹿ももか。
カモノハシと呼ばれる生物と、写真を撮る契約を行った。
写真は、記録。
星の復興に寄与するものだろう。
写真は、記憶。
あなたの記憶に、"ボク"は残ってしまうのだろうか。
暫し、夜釣りを共にした。
契約記録
〇名前の記憶
(#116 ヴェネレ)
星空を見上げかけたときに、相手側から接触。
会話から、金星、と呼ぶ星からの来訪者であると推定。
名称を記録…ヴェネレ。
"レティシア"の名を記憶して貰う契約を行った。
"星は寂しがり屋だから、何時もみんなで輝くの。"
"星はほんとは恥ずかしがり屋だから、お日様が昇れば逃げだしちゃうわ。"
"星はとても怖がりだから、静かに見上げないと隠れちゃうよ。"
"それでも星は、何時も何処かで見ていてくれるから。"
"あなたも星を、星の輝きを、見上げてあげて。"
"星になったみんなを、見上げてあげて。"
見上げた星は、隣にある輝きに、少し霞んだ。
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一日が経過した。
残りの日数は、正確な所はわからないが、16日程度だろうか。
アニマ偏性は落ち着いており、魔導の行使にも支障は無い。
これならば、戦闘行動も取る事は出来るだろう。
その必要は無いと思うし…すべきでは無いのだと思う。
この星に、ボクに染み付いた記憶は、必要無い。