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綺世界へのいざない

ヒトは想像の枠を超えた展開を期待する。旅の舞台は貴方が知るこの世界の何処か。その光景は時に非現実的に映るものだ。

誰かにとっては平凡な日常のワンシーンでも、旅の中に身を置く者にとっては変わった光景に視えることがある。いつもと違った風に濾過されて些末な差異が浮き彫りになると、そこに在るリアルが虚構めいた非日常のように思えてしまう。

それが旅の効能である。



綺世界にて

世界の眺め方はいくつも在れど、現実と虚構を行き来することで浮かび上がる緩衝領域、この世界に在って現実でも虚構でもない、もう一つの領域を綺世界きせかいと言う。

その本質はイマジネーションという第3の領域で展開されるバッファー的現象である。

有馬三山 落葉山|兵庫|2022

綺世界は芸術や文学の世界において『マジックリアリズム』として親しまれている概念に近いものの同一ではない。マジックリアリズムの基盤が創作であるのに対し、綺世界の基盤はあくまでこの世界における現実の物語りだ。

つまり、綺世界への糸口は生身の人間の原体験にある。


SF と Magic Realism

SF : Speculative Future, 時々Science un-Fiction


SF(思索的な未来)はまだ見ぬ光景を予期するものであり推測と想像の域を出ないが、 "今の在り方" について考えるきっかけや視座を与えてくれる。

Magic Realism魔術的リアリズムは非現実的な出来事を "ありきたりの風景" として描写し、今ここに在る現実(あるいは過去)の事象について驚嘆を掻き立てる。
豊かな物語性や幻想性を織りなす "非現実的な日常" を描く一方で、 "奇妙なもの" が登場する不思議な世界を楽しむ奇譚やファンタジーとは一線を画すものである。

両者の共通項は多くの人にはまだ視えていない光景について物語ることだ。


世界の姿を視る技法

誰も気にしていないようなことを気に掛け、それに執心しているように見えたり、何かをブツブツ唱えながら線を引いて、訳のわからない図を書き上げたかと思ったら奇妙な仕掛けを組み立てたりする。
そして、そこで起こることを観察しては一喜一憂し……

つまり言葉にするのは非常に難しいことだが、振る舞いを見て変人奇人だと感じたならば、ソイツはもしかすると科学者かも知れない。けれど貴方が見ている世界とソイツが視ている世界は紛れもなく同じ世界であって、眺める眼の解像度やフィルターが違うに過ぎない。

言い換えれば、ソイツはどうにも詳細な構造や原理に興味を唆らるが故に、物事を緻密に因数分解したりして、そこにある共通項や法則性を宝探しの如く求めてしまうのだ。

バーゼル薬学歴史博物館|スイス|2014

科学もまた、まだ誰も見出していないこの世界の姿を視る技法である。

世の多くの人が共有している感覚と、ある現象を眺めている自分の心象との差分を理解している者を『アルケミスト』という。そのうち他者にも再現可能な手法で調べた物事を根拠に語る者を『科学者』と呼び、その差分を言語的バッファーで書き記したものを科学論文という。

緩衝領域バッファーが魅せる景色は時に驚異と畏怖に満ちており、世界の解像度を変化させ得る力を持っている。

そしてそれは圧倒的な現実の光景である。


不可逆な世界

科学は自然科学・人文科学・社会科学の三位一体であり、自然現象だけでなく社会現象についても観察して法則性や原理を理解するものだ。
これらは決して平面的でなく、立体的かつ多次元に繋がり展開される。

ゆえに一息に語ることは愚か、一口に学ぶことさえ到底出来はしない。

バーゼル薬学歴史博物館|スイス|2014

だからこそ細分化された学問領域が存在し、増大しがちなエントロピー*を各領域コミュニティにおいて制御しつつエンタルピー**の増強を図る。
科学する粒子が集まり切磋琢磨するエネルギーが化学反応を起こす、その反応場を学会とか研究会などと呼ぶわけだ。

そこでは誰もがまだ語られていない事象を探し求める。

そしてエントロピーが増大しエンタルピーが飽和的になると、発散した粒子が新たな学問領域へと派生する。事象の隙間をパズルのように埋めていくことで、三位一体はより精細なものとなるだろう。

そしてエントロピーが不可逆性を持つ以上、隙間風の吹く単純な世界に戻ることも、過去に戻ることも出来はしない。


  • エンタルピー* Enthalpy
    (熱力学)空気が持つ熱量(エネルギー)=気体の温度を上げる内部エネルギー + 膨張・収縮するための流動エネルギー

  • エントロピー** Entropy
    :(熱力学)断熱条件下での不可逆性を表す指標
    :(統計力学)系の微視的な「乱雑さ」「無秩序の度合い」

*宇宙の大原則:秩序あるものは秩序が無くなる方向にしか動かない


事象と心象が交錯する流離譚

ヒトは想像を超える物語を期待する。旅の舞台は貴方が知るこの世界の何処か。垣間見る光景がいかに非現実的に映ったとしても、それは貴方が生きる世界のリアルな姿に他ならない。

だが探求に明け暮れる中、貴方が見つけた綺世界は貴方だけのものだ

忍野八海おしのはっかい|山梨|2022

Magic Realism非現実的な光景とStory of Tourism旅の軌跡 が交錯するリアルな流離譚りゅうりたん

"綺世界探訪Magic Tourism " へようこそ。


initial draft 2024.07.20
rewrite   2024.07.28
rewrite   2024.08.28
rewrite   2024.09.01
rewrite   2024.09.05
rewrite   2024.10.17
rewrite   2024.10.21|Top画像変更, 荒野の歩狼についての記述を移設


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綺世界探訪|Magic Tourism
興味の琴線に触れたあれこれを抽出・精製し、第一の人生を編纂しています。Festina Lenteの信条に則り、「もっとやれ」というサポートによる加速度の変化はありませんが、私の心は満たされます。いつもご覧くださり有難うございます。