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ごりらは今日も木を植える#1

こんにちは 『風通しの悪い部屋』の主をしています。「ごりら」です。
前回投稿した「自己紹介」から、かなり時間が経ってしまいましたが、
書きたいものを書いたので、今回投稿したいと思います。

※本題に入る前に


前回「弱い人に寄り添うポエム」を書きたいと言っていたのですが、
書いているうちに、「これはポエムなのかな」と思う事が多々あったので、
今回から、「ポエム」ではなく、試しに「エッセイ」と呼んで、
今後は書いていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

ごりらの独り言(ここからムードを変えて)

前回、なぜ書きたいのかという理由を、「自分が弱い人の1人だから」と
書いたのですが、後になって、それ以外にも浮かんできたので、
少し書きたいと思います。
例えば、社会から受け入れられないという時、絶望した気持ちになって、
「もう終わりだ」と傷付き、躓いてしまうことがあります。
そんな時、その人がまた自分を取り戻していくことは、至難の業です。
自分はそんな人の気持ちをそのまま代弁するまでには至らずとも、
その人の感じた痛みや悲しみ、苦しみ、孤独、それを誰かが話している。
誰かが語っている。それだけでも生きる希望が湧くと思うのです。
そんな気持ちから、書きたいと思うようになりました。


自分へと帰る


今、最寄り駅から帰路につく自分の前に、
風に煽られたペットボトル転がってきた。
その後ろからベージュのコートを着たOL風の人が、
自分が今出てきた改札口に急ぎ足で駆け込んでいく。
あの人は今、何に煽られていたのだろう。

人込みの中にいると人は自然と歩調が変わる。速くなっていく。
必要に迫られて変わっていく。

今度はその足でのんびりとした田舎の最寄り駅に向かう。
けれども、まだその人は、人込みの中にいる。
ゆっくりとした流れの中には、その人は戻ろうとしない。

その人はその足で、不毛の地へと、心の荒野へと進んでいく。
戻ることをその人は迫られない。

ならば、いつその人は自分に帰っていけるのだろうか。

あの大人たちのように

子供の見つめる先で大人たちはうっとりと過去を眺めている。
今を生きられない大人たちは隆盛を極めた過去から目を離せず、
「あの時代はよかった」と口々に言った。

大人たちは「今」から置いて行かれた人々だった。
あの時間を生きていたことをかけがえのないものとした。
変わらないものがあると、大人たちは心底胸を撫で下ろした。

子供たちは自分たちが生きる今を、貧しいものだと感じた。
全く、自分の生きる時代は生きる価値のないものだと思った。
子供たちは懐かしさを渇望した。あの大人たちのようにと。

そしてまた、あの大人たちが恍惚として眺めていたあの時代とは、
眩く光り輝いてもいたが、時代によって押し流されてく人々の中で、
今の、あの大人たちのように置いて行かれた人が大勢いたのだった。

言葉

「どこにも馴染めなくて、今ここにいる。」
「どうしても繋がることが出来ない。」
「忘れられた。思い出す人もいない。」
「こんなこと誰に言っても伝わらない。」

その様子を誰かがじっと見つめている。
するとそばに来て、自分の手をとった。
自分は慰められたと思い逆上して、その手を振り払った。
しかし、その人は振り払った手を掴んで、そして言った。
「その道のりはもう長くはないだろう。」

そこで自分はようやく悟った。
それは、人が近づいてきたのではなかったのだ。
言葉が近づいてきたのだ。
言葉が自分の元にやってきたのだ。

孤独を生きる知恵

今から何十年、何百年後、ある名もない若者が、
私たちが眠る墓の前に佇んで、こう語り掛ける。

「あなたたちが残したかったものは確かに残っていますよ。」
「もうずいぶん形は変わってしまったけど、まだ残っています。」
「違う時間を生きているけど、繋がっているんです。」

それは、人で溢れたこの時間を独りぼっちで生きる今の私たちが、
普段忘れていた事、そして孤独を生きるための知恵だった。
さらに、それをこの名もない若者が語る事が出来たというのは、
やはり違う時間を生きていたからこその事だった。

竜巻

人の痛み、悲しみに触れようとする時、
それらは、人に見つからぬよう、自らを隠して生きている事を感じる。

悲しみと怒りの経験。
それに触れるというのは、
竜巻を目の前にした時のよう。

触れようとすれば自分も巻き込まれるエネルギー。
止むことのない暴風。風が草木に当たる音に混ざり、断末魔が聞こえる。
その断末魔が方向感覚を狂わせて、恐怖で指の先まで鳥肌が立つ。

竜巻が起きる。
それは誰の心の中にもあるけど、本人には気づかない。気づけない。
それが持つエネルギーは自分を絡めとってしまいそうに思える。

竜巻は隠されている。密かに
何より見つからないことを望んでいる。

若者

「私はいつも、「若者」という言葉で括られてしまうのだけれど、
 自分が若々しいとは思わないんです。」
「他の子のように晴れやかに憂いなく笑うこともできないし」
「何か目新しいものが、私の元に贈られたものだとは思わないんです。」

「それよりも、私の幼い頃の、もっとずっと、自分が無意識だった頃、
 原風景を思い起こさせる出来事を探しているんです。」
「後ろ向きでしょう?「前向き」なんて言葉、もうずっと言っていない。」

「それでも何か、生きる上でとてもとても人間臭くて、
 脆い脆い嘘を重ねるからこそ」
「血の匂いのする正直さをいつも実感する生き方をしていると思うんです」
「そんな人のことを若者だなんて呼ばないでしょう?」

自分を超えるという親切について


ある男は、自分を「親切ができる人」だと無意識にも思っていた。
そんな男の職場に、仕事の出来が他の人よりも劣る人がいた。
(実際、その人に対して叱責する人もいた。)
男は不愛想とはいかないまでも、その人に対してはいくらか他の人より、
冷たく接するようにした。自分もそうなってしまいそうで、恐かったのだ。

ある時、男はその人の隣の席で、仕事を手伝い、手を貸す人に気づいた。
男がその席に近づくと、隣にいた人は、少し慌てたように荷物をまとめて、
「私、こんなことをしていたら叱られてしまうわね」と言い、去った。

男はしばらく、その様子をみて呆然としていたが、少しして、はっとした。
そこには、親切をする人を選んでいたというショックもあったが、
それよりも、男を刃物で刺すように容赦なく貫いたのは、ある疑問だった。
それは、「自分は親切ができる人ではなかったのか?」という問いだった。

我が身可愛さに親切を施す相手を、それに値するのかどうかの勘定をする。
そんな自分自身を超えられない人が「親切ができる」と思い込んでいた。
意図せず、男はあの鋭利な問いの答えを既に体現していたと悟った。

団地


場違いに明るい午後8時、その中でぼんやりとした灯りが見える。
その灯りは、その時間帯であるからこそ、規則正しく並んでいるのではなく
間を空けて、それぞれの部屋の中から漏れ出ていた。
その景色は、自分たちの言葉よりも正確に、少しのズレもなく自分たちを―
表していた。その誠実さは、いつも癒やしを与えてくれる。

ごめんなさい


もし、何かいう事があるとすれば、それは「ごめんなさい」だろう。
自分は、いつも偽ってきた。自分という人を他人に理解してもらうために。
しかし、それでは立ち行かないということを無意識にも感じていた。
だからいつも焦っていた。まるで、行き止まりと知っていながら、
その道を何かの気まぐれで進んで行ってしまうような感覚だった。
そして、ある時、なにかの間違いで、この言葉が浮かんできた。
「どんなに自分を偽っても理解されることはないだろう」
言葉というより実感に近いのかもしれない。
まるで、全く知らない所まで歩いていくと、その場所に
理由のない安心感をそこに感じたりするような、ランダムな感覚だった。
だからこそ、「ごめんなさい」なのかもしれない。
自分が愚かだったと実感した時というのは、人は自分にさえ、
謝りたい気持ちが生まれてくるものだと知ったような気がする。


誰もわかってくれない


ある人の身体には、説明のできないものが宿る事があった。
その人の心の内を知ることは出来なかったが、その人の行い一つをみれば、
その人の語りたい事、もっと言えば、その人の心の中で響き続けている―
言葉がある事は、すぐに分かった。

その人は、聞こえないその心の声によって、こう語っていた。
「どうして自分にこれが宿ったのか」「自分に宿った意味とは何だろう」
その人に宿った意味とは何だったのか。はっきりしないが、
きっとその意味というのは、その人に肩を貸し、孤独というもうひとつの―
冷気のような内なる声から、その人を支えていたのだろうと思う。

宿題


今、辞書を開いて、自分が当てはまる、あるいは自分が聞いて―
しっくりくる、自分を言い表す上で、「フィットする」―
単語を探しているのだけれど、一向に見つからないどころか、
最後のページにまで来てしまっていた。
明日までにその単語を見つけてこなければいけないのに、
朝まで努めて探したとしても、見つからない事を直感した。

ならば諦めて、こんな事は初めから無かったと、逃げてしまおうと思った。
しかし、そこで、寒気のするような不安に襲われた。

自分を言い表す言葉がどこにも無いのなら、一体自分は誰なのだろうか。
どこの誰で、いつ生まれたのかも知っているのに、生きている実感がない。
自分は新たに生まれた人類で、今自分が仲間と言える人はいないのか。
その時、生きていて初めて、自分が異物のように感じた。
この世に生まれた異物だと。
どの言葉にも当てはまることのない異物なのだと。

おわりに

読んで下さり有難うございます。
不定期ですが、今後も更新していきたいと思っています。
よろしくお願い致します。







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