医師が振り返る医学部生活で重要なこと

私は関西の私立中高一貫校から地方の国立医学部を卒業し医師となった。
医師となってそれなりに時間が経つが、医学部生活を時に振り返ることがある。一体なにが大切だったのだろうか。思いつくままに書き連ねてみる。

1.学歴コンプレックスは完全に無意味である


医学部生はおしなべて学歴厨だ。私も例外ではない。少年時代、青春を勉強に捧げたのだから無理もない。
地方国立医学部の新入生の集まりを思い浮かべてみよう。
医学部といえど、あくまで大学としては皆が皆、熱望して入学したわけではない。
元々●●大学を目指していた、あるいは受験したと豪語する学生、名門●●高校出身である、といったように中高の学歴マウントを取り始める学生がいる。

結局ゴールは同じだけに、これは聞いていてかなり痛々しい。
中でも最悪なのは地域枠推薦者を公然と馬鹿にする人間だ。そういう人間に限って入学後の成績は不良で留年していく。

こういった学歴コンプレックスは全く不毛で非生産的である。
理三志望だったが医科歯科や慶応になった人、旧帝など難関国立医志望だったが地方国立医になった人、国立志望だったが私大になった人、様々いると思うが、医師に学歴は関係がない。医学部に入った時点でリセットアンドスタートなのだ。コンプレックスがあるなら、それはこれからの大学の勉強に昇華させるべきだ。

2.留年しても大丈夫


医学部生の一番の生活上の懸念は試験失敗、留年だろう。もちろん、すべての試験には全力で挑まねばならない。
しかし、一方で、1年くらい留年してしまっても実は大して問題にはならない。その後医師になれればチャラである。むしろ、留年をおそれて過度に思いつめすぎてしまったり、精神的に身動きがとれなくなったりするほうが問題だ。留年してしまって、自分はダメだ、と卑下しすぎるのもよくない。取り返しのつく失敗は笑いとばすくらいがちょうどいい。
もっとリラックスして、医学部生活を送ればいいと思う。

3.地方の生活も悪くはない


地方医学部生の中には都落ちして落胆している人もいるだろう。田舎はつまらん、と思うのは無理もない。
しかし、後ろ向きな気持ちで過ごすには6年間は長すぎる。前向きなスタンスで臨もう。地域枠でなければ、卒後は都会に戻れる。また、車があれば移動には不自由しないし、車なしの都会生活より便利ということもある。運転スキルを在学中に身に着けると後年役に立つ。

4.彼女ができなくても問題ない


男子限定の話にはなるが、彼女ができなくても決して落ち込む必要はない。とりわけ在学中一度も彼女ができないと悲惨な目でみられやすいが、私は何ら問題ないと断言する。
医師になってからでも恋愛や結婚で逆転は可能だ。
振り返ると、総じて地方医学部の女子の容姿のレベルは低い。

医師になった後にもっとレベルの高い女性と出会えることを考えると、無理して学生時代に交際する必要はない。それよりも同性、男子とバカ騒ぎする時間を大切にしたほうがいい。そういった時間は貴重で今しかできない。

逆に言えば、女子医学生は医学部男子を在学中に捕まえておくべきだ。医学部男子の中には中高一貫の男子校で過ごし13歳から18歳まで1度も女子と会話をしたことのない者が少なからずいる。そんな彼らに自ら軽くアプローチすれば、たちまちメロメロだ。必ずゲットできる。

5.バイトは不要


学生はアルバイトをすべし、といったような風潮は一体誰が作ったのだろうか。私が否定したいのは、金銭的な困りや必要性がないのになんとなくバイトをして時間を溶かすことだ。学生としての自由時間のほうがアルバイトで得られる賃金より圧倒的に貴重である。

6.自分はこれを頑張った、といえるものを残す

代表的なことは部活だが、医学以外の勉強や読書、料理などでもいい。私は英語の勉強に打ち込み、英検一級を取得した。医学部において、英語は最も学力が露呈しやすい科目なので、得意な人も苦手な人もある程度やっておくことを勧める。

逆に、これだけは絶対に避けるべきことがある。

1.除籍、放校になる


留年を繰り返すと、大学によっては除籍となる。除籍になってしまうと、今後医学部に再チャレンジしても面接で弾かれ詰む可能性がある。先ほど私は留年は多少は問題ないと述べたが、その限度年数と放校には注意したい。

2.男女トラブル


滋賀医科大学の学生が強制性交罪で逮捕、起訴され、除籍退学になった事件が記憶に新しい。6年生で医学部退学という、これまでの人生の積み上げが一度の女性トラブルで台無しになったケースである。
酒+女性は思わぬトラブルに発展することがある。特に複数の男性+一人の女性といった組み合わせは危険だ。医学部男子は元々女性の扱いが下手なことが多く、異性体験の少なさに過度に劣等感を感じており、その焦燥感から突飛な行動に出やすい傾向にある。あとから笑い話になるレベルの失敗であればいいが、一発アウトの行為には注意したい。

3.喫煙


タバコには絶対手を出してはいけない。反論を呼びそうだが、現在の日本では喫煙者というだけで人間としての品位が一段落ちるといってよい。異性の恋愛対象として一発退場の可能性もある。喫煙は習慣になると抜け出せない上に健康を損なう。財布にもよくない。あとクサい。



最後に、医学部生活を語る上でかかせない要素がある。

それは部活だ。


多くの人が医学部に入って驚くことはサークル活動ではなく、中高のような部活動が盛んなことだ。医学部専用の部活は医学部の排他性と閉鎖性を象徴している。医学部は6年制であり、試験の厳しさも他学部とは比較にならないので他学部と同じシステムでは共存しづらいのだろう。大学生にもなってサークルと比べ規律や練習が厳しい部活に入るのは気が引けるかもしれない。
とはいえ、部活にはよほど固い決意がない限りはとりあえずは入ったほうがいい。特に学年が進むと後からは入りにくくなるので、ひとまず複数入っておいて後から品定めするのを勧める。

しばしば言及される部活の大きなメリットとして、試験情報がもらえる、ということがあるが、私としてはこれはそれほど大きな利点には思えない。昨今は試験の過去問は学年全体でクラウドで共有されており、部活内だけで試験情報が回る、ということはあまりないからだ。

私の意見では、部活の最大のメリットは将来の仕事の疑似体験ができることにある。
どういうことか。
部活は明確な縦社会だ。上級生の要望や指示はほぼ絶対である。縦のつながりで下級生は上級生から教えを請い、指導を受ける。そしてその下級生が上級生になった時、新たな下級生を指導する。この流れは、まさに未来の医局の働き方そのものだ。部活に適性があった人間は、医師としても医局に適性がある。逆にうまく順応できなかった人間は、将来的に医局にも馴染めない可能性が高いので、医局以外の道のりも考えたほうがいい。医学生にとって部活は、将来を考える上でひとつのシュミレーションになってくれるのだ。具体的な競技の技術は付加的要素にすぎない。


振り返ってみると、私の医学生時代は決して幸福とは断言できず、忍耐や鍛錬の期間という認識だった。
正直、もう二度とやりたくはない。
しかしそのおかげで今の自分があるし、苦労の甲斐はあったと感じる。

いいなと思ったら応援しよう!