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らーめんをお風呂にする子猫たち
ある日の深夜、キッチンでラーメンを作っていたら、なぜか子猫たちがソワソワし始めた。
「ニャー(それ、なんかいい匂いする!)」
いつもなら夜はおとなしく寝ているはずなのに、今日に限ってみんな私の足元をウロウロしている。まるで何かを期待しているかのように。
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「いやいや、これは君たちのごはんじゃないよ」
そう言いながらも、なんとなく気になって子猫たちの様子を観察してみた。すると、麺が茹で上がる瞬間、彼らの目がキラーンと光る。
「ニャー!(お風呂の時間!?)」
……は?
次の瞬間、子猫のひとりがカウンターに飛び乗り、私の腕をペシペシしながら鍋を覗き込んだ。お湯がぐらぐらと煮立ち、ちぢれ麺がぐるぐると踊っている。
「違う違う!これはラーメン!君たちのお風呂じゃない!」
しかし、彼らの中ではもう「お風呂=ラーメン」になってしまったらしい。お湯の中に浮かぶ麺が、まるでふかふかのバブルバスに見えたのだろうか。いや、そんなバカな。
とはいえ、彼らの期待に満ちた目を見ていると、なんだかこっちも楽しくなってきた。
「……じゃあ、入ってみる?」
その瞬間、子猫たちのテンションが爆上がり。みんなでテーブルの上に乗って、ワクワクしながらラーメンの器を見つめている。
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さらに数匹の子猫たちが、どんぶりの周りを囲んでじーっと観察していた。まるで、これからどうやって浸かるかを相談しているかのように。
「ニャニャ……(まずはスープの温度確認?)」
「ニャー!(麺の上ならふわふわかも!)」
「いやいや、入らないよ!? これは私のごはん!」
しかし、一匹の子猫が意を決したように、ぴょんっとラーメンの器に飛び込んだ。
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「ニャー……(あったかい……)」
まさかの大満足。スープに浸かり、まるで温泉にでも入っているかのように目を細める子猫。すると、それを見た他の子猫たちも次々とラーメンの器に飛び込んでいった。
「ニャニャ!(いい湯だニャ!)」
「いや、だからこれはお風呂じゃないってば!!」
結局、その日から「ラーメン風呂」は我が家の定番になり、ラーメンを作るたびに子猫たちは飛び込む機会をうかがうようになった。
……そんな光景を見ながら、ラーメンをすすりつつ思った。
「いや、これ、なんか違くない?」
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