Memory of the Ring 第1話
第一章 ~コスモスの女神~
1,美空と美夜
コスモスの女神。あなたは今、どこにいるの?
私は美空。十九歳。コスモスの女神様、コスモと呼ばれた女性に憧れ、勇者になることを夢見ていた。
そんな私が今、何をやっているのかと言うと、私の故郷である〈コスモスの大陸〉を取り戻すために、荒れ果てたコスモスで模索しているところだ。
まずは私の故郷を知るためにも、この世界と歴史を説明しなければならない。
この世界には五つの大陸があり、〈中央の大陸クローバー〉、〈東の大陸アネモネ〉、〈西の大陸コスモス〉、〈南の大陸ヘリアンサス〉、〈北の大陸スイレン〉と呼ばれている。中央の大陸を除いてそれぞれの大陸は気候が異なり、アネモネを春の大陸、コスモスを秋の大陸、ヘリアンサスを夏の大陸、スイレンを冬の大陸とも言う。一つの大陸に一人の神が君臨し、合計五人の神々が存在している。神に選ばれた者は、百年間の神の座にいることと、長寿を手にすることができるシステムである。
問題のコスモスについて少し触れていこうと思う。
〝コスモ〟と呼ばれる女神様がいた。コスモスを統治する後継者として選ばれた女神様は、コスモスを魔物や外敵から守ってきたり、子どもたちに魔法を教えたりしていた。そんな女神様の功績を称えて、〝戦の神〟と言う称号まで与えられた。
そんな女神様は突然、魔力の制御が利かなくなり、僅かな森林と少数の村を残して、コスモスの大半が消滅してしまった。人間の手では負えないほど、再生不可能となってしまったコスモスは、その後も村同士での争いが勃発し、余儀なく他の大陸へ避難しなければならなかった。私も、村から追い出された一人だった。
いつしかコスモスには、女神様を除いて誰もいなくなってしまった。現在コスモスにいるのは、僅かに残った森林の管理者や調査員、研究者、レベル上げのためにわざわざ他の大陸からやって来た冒険者たちである。
私は、故郷にもう一度帰りたくて、数少ない手掛かりと伝承を頼りに冒険を始めたのだ。パーティを募って、一緒に冒険をしてくれる勇士を探していたのだが、今もなお、募集者ゼロである。つまり、私は単独で冒険を続けているのだ。十九歳にしは、少々寂しい旅である。
いつものように、今にも崩れ落ちそうな建物から残骸を拾い集めては手がかりを探していたその時だった。天井から、キラキラ光る物が落下してきた。手に取ってみると、しばらく埃をかぶっていたのか、少しくすんだ灰色をしていた。
「誰の落とし物だろう?」
その後もくまなく探していったが、めぼしい物は見つけられなかった。今日の収穫は、灰色だけれど少し光る指輪と古びた歴史書。それが、この後に続く冒険にどれほど重要なアイテムになるかは、この時はまだ知る由もなかった。
帰宅してからも、私はずっと自室にこもって、コスモスの大陸で拾った歴史書を無造作にペラペラとめくっていた。あるページに差し掛かったところで手を止めた。
「〝世界を救う九つの指輪〟…?」
〝この五つの大陸には九つの指輪が眠っている。アネモネ、ヘリアンソス、コスモス、スイレンの大陸にそれぞれ二つずつ、クローバーの大陸に一つ、これらの指輪は神や王様がそれぞれ所有している。その九つの指輪がそろったとき、無限の力(エネルギー)が発生し、この世界で最も素晴らしい偉大な英雄になれるだろう。〟
この指輪さえあれば、もしかするとコスモスを元に戻せるかもしれない。私は、一晩中歴史書を読みふけり、何か情報はないか探し続けた。
次の日、私は残りの八つの指輪を探すため、新たな冒険の旅に出ることにした。その歴史書によると、二つ目の指輪はコスモスの森林の奥深くにあるそうだ。けれど、私には一人で森の中を探検できる自信はないので、案内人を付けてもらおうと管理者に問い合わせることにした。
「えっ、今は入れない?」
どうやらタイミング悪く森林に魔物が現われてしまい、一時出入口を封鎖しているのだ。魔物を全て討伐するには数日間、場合によっては数年間かかるそう。突然の魔物の出現により、待機せざるを得なくなった人達のための宿泊施設もあるようだが、あいにく私には金がない。だからといって、魔物がいつ襲ってくるか分からない森林で一人野宿する勇気もない。困ったな、どうしよう。
「あの、どうしたんですか?」
後ろを振り返ると、私より年下の少女が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。たまたまギルドに立ち寄っていたそうだ。せっかくだから、彼女とお話ししながら待ってよう。そのついでに、指輪について何か知らないか、聞いてみよう。
「実はですね、森林に探し物があるんです。コスモスの大陸を取り戻す指輪です。本当にあるかどうかは分からないんだけれど…。」
「指輪って、伝説の〝世界を救う九つの指輪〟のことですか?」
「どうして知ってるの?」
「実はわたしも探していたんです!良ければその話を詳しく教えてくれませんか。」
私たちは待っている間に、指輪についての歴史書と灰色の指輪のことを話した。
「自己紹介が遅れました。わたしは美夜(みよ)と言います。普段は剣の鍛錬をしていますが、冒険者です。もし良かったら、わたしもそのパーティに参加させてくれませんか。」
おぉ、さっそくパーティメンバーが見つかったよ。やっぱり、話してみる価値はあるみたいだね。
「美夜ちゃんありがとう!そしてようこそ、わがパーティメンバーへ!…っと言っても私一人なんだけどね。これからはよろしくね!」
「はい!こちらこそよろしくお願いします。」
すると、ピンポンパンポン♪と心地よい鐘の音が流れた。魔物討伐の終了の合図だった。
「じゃあ、早速森林へレッツゴー……」
「美空さん待ってください!地図がないと迷いますよ。ただでさえこの前は行方不明者が現われたとき、六時間も待合室で待機しなきゃならなかったんですから。万全の準備をしてからにしてください!」
「あ、はい。」
どうやら一筋縄ではいかないみたいだ。
続く
余談
小説では初の投稿です!
この物語は長編にしていこうと思っているので、ケータイ小説のようにちょうど良い所で区切っていくことにします!
(小説初の投稿なのに長編⁉)
どうぞよろしくお願いします!