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自分の顔に責任を持てますか?
親戚の子供とか、久しぶりに会うとのその成長ぶりにびっくりする。一方、同じ年ごろであっても自分の子供の成長ぶりは日々目にしているだけあって自分の背丈を超すまでよくわからなかったりするものだ。洗顔などのたびに言葉通り毎日顔を合わせる自分の顔もそういうものかもしれない。
男が日焼け止めなど気にする時代ではなかったから年齢相応にシミやしわはあるし、瞼や頬も垂れ下がってきた。でも、土台となる顔そのものは若いころからそんなに変わっていないと勝手に思っていた。体型もウエストこそワンサイズ上がったもののそんなに変ってはいないし、小学校は無理でも、高校以降の同窓会なら顔を見てもらえばすぐに誰か気づいてもらえる自信があった。
ところが、たまたまバックアップ用のハードディスクに保存してあった写真データをつらつらと眺めていたら、その中に30代前半ごろの自分の証明写真データが出てきたのを見つけて驚いた。見ると確かに自分なのだが、全体として今とは雰囲気が全然違う。自分にとっては昔よく見た顔なのですぐに自分だと認識したが、赤の他人が見たら同一人物とは見なしてくれないだろう。少なくとも顔認証は通るまい。
年寄りを描くのが苦手な漫画家が描くキャラクターにように、自分の顔は若いころのものにしわやシミが加わっただけのような気がしていたが、こうしてみるとけっこう大幅モデルチェンジぐらいはしていることが分かった。妻が言うには「こんな人ではなかったはずなのにと思うことがある」ということなので、ひょっとしたら外見だけでなく中身ごと寝ている間に妖精に入れ替えられた可能性もある。かのリンカーンは「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言ったそうだが、このありさまでは到底責任が取れそうにない。