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その武器は自信となり、希望をかなえ、やがて世界を変える――書籍『武器になるHTML』の推薦

2022年11月26日発売の書籍『武器になるHTML』において、微力ながらレビュアーとして参加しました。この本を、ウェブに関わるすべての人に手にとってもらいたく、筆を取ります。

私は、HTMLが大事だと考えている知人たちと「世の中のウェブサイトをより良くする方法」を話し合うことがあります。その際の結論は、いつも「初学者へのHTMLの教育」になります。この書籍は、その結論に正面から挑んだ、偉大な書籍です。

「CSSありきのHTML」を学ぶと起きること

これまでの初学者向けの講義・セミナー・記事・本などは、CSSありきでHTMLを伝えるものがほとんどでした。魅力的なビジュアルやアニメーション、操作感などからウェブ制作に興味を持つのはよくある話です(私も一番最初はそうでした)。また、ウェブ制作を依頼する顧客も、そうした視覚表現を期待している場合は多いでしょう。その需要をもとに教材を考えると、どうしても視覚表現のためのCSSが話題の中心になります。

HTMLだけに多くの紙面を割いたり、時間を使ったりすることができないので、結果としてHTMLは「CSSのために最低限用意すべきもの、決まっているとおりに書くもの」という扱いに留まります。しかし、こうしたかたちで学習を進めると、HTMLを書く本当の意味がわからないまま、次のステップに進むことになります。

こうなると、デザイン案をCSSで再現することはできても、その土台となるはずのHTMLには意識を向けなくなります。基礎がないため、出どころが不明なSEOの作法や、問題がある「CSSだけで◯◯」系ハック、作業効率化のためにdivとspanだけで作るアプローチなどにも心が動かされます。その結果、見た目には美しくても、使い方によっては情報が読み取れない・理解できない・操作できない、つまり使えないウェブサイトを、無意識のうちに作ってしまいます。

こうした「使えないウェブサイト」は、プロの成果物であっても非常によく見かけます。もちろん、制作者に悪気があるわけではありません。制作物が多くの人に届くようにウェブという媒体を選び、多くの人に伝わることを願ってデザインやコーディングをしているはずです。ただただ「HTMLを書く理由を知らない」がゆえに、こうした事態が起きています。

「1冊目に読む、HTMLだけの本」というチャレンジ

ウェブの根幹はHTMLです。情報を意図通りに伝えているHTMLがあるからこそ、ユーザーはさまざまな環境からアクセスし、情報を得て、それを再利用することができます。そのことを、できるだけ早い段階、つまりウェブでの発信やウェブ制作に興味をもった段階で、知ってもらいたいのです。そうすれば、「無意識のうちに使えないウェブサイトを作ってしまう」という事態は、かなり減るはずです。

とはいえ、現状の主流であるCSSを重視した学習の流れを変えるのは、かなりのチャレンジです。初学者の興味はHTMLから少し遠いところにあるし、今はHTMLだけでは仕事になりにくいからです。HTMLをちゃんと書きたいという思い自体は存在するかもしれませんが、潜在的ニーズであり、モヤモヤを抱えているというレベルの人が多いのが実態でしょう。

そんな中でも、あえて正面から、1冊目に手に取る想定の、HTML「だけ」を扱う本が出版されたのです。著者や出版社は、本当に売れるのか、さぞ心配だったかと思います(いまは売れ行きが好調なようでなによりです)。私はHTMLが大事だと考える一員として、この挑戦を応援しないわけにはいきません。

教育現場のノウハウに基づく、積極的に導く本

本書は、HTMLの要素を解説したり、使い方のサンプルを挙げたりするリファレンス本ではありません。初学者が「自信をもってHTMLを書ける」という状態になるために必要なことを、すべて教えてくれる本です。

著者の柴田さんは、実際に多くの初学者に向けてHTMLを教えてきた方です。初学者がどこに興味を持つか、何を楽しいと感じるかを知っています。さらに、飽きてしまうポイント、つまづくポイントも、知っています。そうした現場のノウハウを、この本にすべて盛り込んでいます。

「会話でおさらい」のパートで初学者が間違いやすい点を何度も念押ししたり、いっぽうで難解かつ利用頻度が低いところは「ここは後回しでいい」と明示していたりと、積極的に学びを導いてくれる構成になっています。これは、数多くの初学者に向き合い、根気強く育てた経験がなければ、絶対に書けない内容です。私もレビューのなかで、「こういうところでつまづくのか!」「ここはむしろあっさりでもいいのか……」など、非常に多くの学びがありました。

その武器は自信となり、希望をかなえ、やがて世界を変える

私はウェブによる社会の発展を信じており、その根幹にはHTMLによるアクセシビリティがあります。そして、ウェブは中央集権的なものが作っているわけではなく、私たちが日々作っているウェブサイトの集まりでできています。ですから、そのひとつずつのウェブサイトのHTMLが適切なものになっていけば、理論的にはウェブ全体が良くなる可能性があります。これは決して机上の空論ではなく、あり得る話だと思っています。

ウェブが発信媒体として定着し、またウェブ制作が仕事として認知されて、四半世紀が過ぎました。いまでは職業の一つとして定着し、制作会社も増え、クラウドソーシングも活発です。ウェブ制作に関わる人は増え続けています。そして、ここが最高に重要なポイントなのですが、ウェブに関わる人の中で最も人数が多いのは、いつの時代でも初学者です。

この、最も人数が多い「ウェブの入り口」にいる人たちに、この本を通じて「HTMLの意味」を理解してもらえたら。この本を通じてHTMLを理解した人が、また誰かにHTMLの意味を伝えられるようになったら。世界はほんとうに前に進むのでないかと、私には思えるのです。

ぜひ、この本を通じて「自信をもってHTMLを書ける」という武器を手に入れてください。それは読者や、読者に制作依頼する顧客の「多くの人にウェブサイトを使ってもらいたい」という希望をかなえる武器にもなります。そのことが、読者の将来にも、読者が制作したウェブサイトのユーザーにも、そしてウェブ全体にとっても、大きな価値をもたらすと私は信じています。


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