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酷暑たね二郎

昨年冬からずっと続く野菜の高騰で、気軽に野菜を買えなくなった私がいる。
高い上に、小ぶりだったり、今イチ覇気を感じない野菜をカゴに入れる気にならなかったりする。

もやしでさえ正規価格が48円。
かいわれ大根が特価で27円て、何かの冗談かと思ってしまう。そもそもかいわれ大根が『特価』って、今まで見たことがないかも。

そんな折、久しぶりに安くて質の良い白ネギを見つけて二束買った。

新鮮で瑞々しくて立派な野菜が安いって、ああ何て幸せ。

帰って早速、一束は全部みじん切りにして生姜とニンニクと麵つゆに漬け込んだ。

冷ややっこやそうめん(※長年こればっかりだった揖保乃糸素麵も6本入400円超。泣ける)はもちろん、鶏肉や豚肉のメニューに重宝するのだけれど、昨日は中途半端に残って冷凍保存していたご飯をレンチンして、このタレで焼き飯にした。

ちなみにネギの代用はニラ。
ニラもクセになるほどおいしいタレになる。

マジで試してみて。


ただでさえ、夏の台所は暑い。
この時期にフライパンを使うメニューはどんだけ厳しいか、料理をする人なら誰だって知っている。

コンロの前は火あぶりの処刑台だ。

なんでこのクソ暑い日に焼き飯を…と悔いたが、作り始めてしまってから気が付いたので仕方がない。

たね二郎はギョーザとチャーハンが好物なので、ヤツが帰る日は、冷凍ご飯を消化できるチャンスだし、と、汗だくだくになって炒めてやった。

「今夜はネギダレの焼き飯だ、イケるでしょ」
「え? これ、焼き飯なんか?」

汗をぬぐいながら言う私に、もぐもぐしながらたね二郎は言った。

「何だと思って喰ってる?」
「混ぜご飯」

絶句した私の様子にまったく気づかず咀嚼を続ける。

たね二郎は正直者なので、滅多に褒めない。

次は混ぜご飯を「焼き飯」と言って出してやろう。
もう夏に炒めてなんかやるもんかと思った。




明けて今朝、朝食のプレートと一緒に出したコーヒーを、たね二郎は不機嫌面で私に差し戻して来た。

「どした?」
「これに氷入れて」

ホットコーヒー用の豆とアイスコーヒー用の豆は、種類もそうだが、焙煎度合いが違う。

我が家は深煎り焙煎の豆を使っているので、氷を入れて薄まってもまあ、そこそこイケる。

が、だからといって、氷を入れればアイスコーヒーになるわけではない。

アイスコーヒーは氷たっぷりのグラスへ、濃いめにドリップしたコーヒーを注ぐから急速に冷えて、香ばしくおいしいのだ。

ホット用に淹れたコーヒー、しかも耐熱マグカップに注いだ熱々のコーヒーに氷を入れたとて「薄まったぬるいコーヒー」にしかならない。

「このカップに氷入れてくれればいい」
「いや、でも氷を入れたからって、アイスコーヒーにはならないよ?」

それでも入れろと言って聞かないので、しぶしぶ、氷を容器に入るだけ入れてやったが、案の定、みるみる溶けて行く。

「ぬっっるっ!うっっすっ!」

たね二郎はひと口飲んでご丁寧な感想を述べた。
尋ねてもないのに、わざわざありがとう。

「だから、ホットで飲めばいいのに」
「こんなクソ暑いのに、ホットなんか飲めん」

こんなクソ暑いのに?
ホットなんか?
飲めん?

思わずリピートアフターユーしてしまった。

この時期、コーヒーを淹れる前には必ず「アイス or ホット」をいつも聞いてやっているのに、たね二郎は昨夏のある朝、

「オレ、朝はぜったいホット!」

と、半ギレで返して来た。
朝は機嫌の悪いたね二郎。

私もムッとして、だったらもう聞いてやるもんかと思った。
朝の機嫌の悪さにかけて私はおまえに1ミリも負けはしない。

機嫌悪いながらも朝食を用意する私に、どうしてこうも不機嫌で挑んで来るのか。

#毒親に対抗して、#毒せがれって拡散してトレンドあげてやろうか?


「朝は夏でもホットだって言ったの、あんたでしょーに!」

「朝から汗だくでホット飲む意味わからん!」

#は



意味? あたくしはわかりますけど?

朝いちばんに飲むものは温かい方が内臓にいいのです。
しかも、「夏でも朝はホットだ!」と、確かにおたくさまがそのお口でおっしゃいました。

あ、もしかして
今年のオレさまに昨年のオレを持ち出すなと?
オレさまは日々進化を遂げていると、そういうことですか?

さようでございますか。

こちとら熱湯の湯気かぶりながらホットコーヒーをハンドドリップしました。
昨夜は汗だくだくで焼き飯を炒めました。

「美味しい」って言うと、バチでも当たりますか。

「お母さん、せっかくで悪いんだけど」のひと言は
あなたのお体に障りますか。

「ありがとう」っていうと、口がかぶれますか。



「あ、血だ。ヤバい、また肌が荒れる」

たね二郎は私の目の前で、髭剃りの刃で傷つけたあごをマキロンで消毒して絆創膏を貼って見せる。

そうそう、あんたって、性格と違ってお肌はおデリだもんね。

「かぶれにはステロイドでええのかな」
「さぁ」

おまえにつける薬があるかね?




野菜が高い高いと不満に思っていたが、野菜よりもっとお高いヤツがここにいる。

野菜に陳謝。

たね二郎、おまえはステロイドより洗濯機  ※買え。




※たね二郎の洗濯機問題 ↓



こんな私が書いた「運気を好転させた実話」ですが、
いかがですか?

けっこう売れてるって言っても説得力ゼロ?^^;)



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