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①共同配送とゲーム理論

最新のゲーム理論を勉強する前に、現況を書き出してみた。未整理。

互いに「一回手伝ったら幾らね」と決めれば良いような気もするが、話はそんなに簡単ではない。共同配送は私が知ってる限り、もう20年以上前から提唱されているのだ。それでも一向に進まないのは何故なのか。
ちゃんと考えた事が無かったので、今回は書き下してみた。
何回か書き直そうと思うが、書き始める前は共同配送に参加する会社同士でナッシュ均衡が生まれるだろうと思っていたのに、書き進めるにつれてむしろ計画作成の部分でナッシュ均衡が生まれる!事に気づいてゾッとした。


今回考えた結論:意外と深い

★情報の問題(数量が物流側の言語で表現されている)整備必須。
★製造と同じく生産管理の大問題が表面化する。
 中間デポでの中日程計画と小日程計画:
 在庫型発送ならばまだ良いが、製造進行中発送は至難の業。
(滞貨型の中間デポは良いが、通過型では非常に難しい)
★一番面倒だと思った「n人提携交渉問題」はなんとかなる...?
・繁忙と閑散がズレあっている異業種の他社同士ならば可能。
・慣れてて運びやすいけど、同種類の(競合)他社は無理。
👉同一社内の共同配送が意外と進まないのはこれが原因か。


<現場視点1>

発送現場の望むことは遅延で怒られない事しか無い。極論では、担当レベルでは混載しないで一種類・一箇所毎にスカスカで出したい。KPIとして重量辺り物流費で縛られているならばこれを牽制できるが、そんなの出来てる所の方が少ないだろう。 発地で混載する事のデメリットは、
1)片方がまだ製造完了していない場合に出発が遅れる。
2)積み地、降ろし地のどちらかが2箇所以上になると時間を要する。
3)その日の中で担当が活用できる車両数は既に確定している。急に予期しないトラブルが起きる可能性が増える。怒られるのは自分なのだ。

起きること👉

現場には共同配送にするメリットは無い つまり組織全体と現場の評価指標が異なる。これはうまくいかない。 選択肢があれば、共同配送しない方に現場が動く

どうするか👉

方法は2つ。①配車権を現場から取り上げる、②現場の評価指標を共同配送回数にする+遅延した時の責任を現場から解放する…

①は一見すると良さそうである。しかし、製造部門で大日程、中日程、小日程計画の3種類が伝統的に必要な理由を考えて欲しい。そう、無茶苦茶に難しいのだ。①が可能だったら、計画は中日程だけになってる筈だ。

中日程計画:スタッフが作成する計画。今回の場合は、共同配送の部分が該当する。とにかく、崩れやすい。上手く行く筈が無い。
小日程計画:直送分と、中日程計画が狂った場合のイレギュラー処理が該当する。崩れた中日程計画のケツ拭き、後始末。
※特に、製造中発送や共同配送センターの計画はイレギュラー率が10%以上はある。これをスタッフが修正できるとは思えない。

②はどうか?指標設定はできそうだけど、遅延した時の責任を現場が取らなくていいなら、誰が取ってくれるんだろうか?

実際、TVニュースで見たのだが… 物流会社で中継デポの所長の苦悩というのをやっていた。積み替えて出発したい車は口を開けて待っているのだが、肝心の荷物を運んだ車がなかなか来ない… 1台到着が遅れると、積替え要員とバースの計画表が狂っていく。電車のダイヤ乱れと同じである。所長は常に計画修正と調整ばかりやっていて、残業で過労になっていた。こうした光景が目に浮かぶ。誰も遅延の責任を取ってくれないからだ。

路線バスは遅れたら遅れっぱなしだからいい。運転手は責任を取らないから。あんな風にできるだろうか。路線バスは共同配送に見えるが、そうではなく直送の考え方だ(乗客が中継センターで乗り換えをするのが前提ではないから)。直送は遅延に強い。共同配送は遅延にすこぶる弱い。湘南新宿ラインが遅延すると、その途端に埼京線・宇都宮線・高崎線などもダイヤが乱れるのと同じ。


<現場視点2>

積み込む物の情報はあっても、なかなか数値だけでは分からない事が多い。特に量の情報は不足する事が多い。何故ならば、製造側の考える単位と物流側の考える単位は異なるからだ。
例)
製造側は個・冊・部・本など、パレットや箱の中身の数で管理をする。
10,000本のペットボトルが何パレットなのかは重視していない。
そこで、数量単位として「10,000本のペットボトル」だけが来る。

それを受ける発送部門は、長年の経験と勘で「2パレットと3箱だな」と分かってしまう。数式など存在しない。

共同配送をする様になると、全く経験則の無い発送部門に「10,000本のペットボトル」という謎情報が届くようになる。これって何パレットなの?ただでさえ問い合わせの多い発送部門に、新たなる負荷がのしかかる。現場の作業は大混乱するだろう…
まずは製造側に情報整備をお願いしたいのだが、その重要性を理解できないので話は一向に進まない。

情報未整備のまま、共同配送のお題目だけが進んでいって破綻する。それを何度も何度も見てきた。


<利益目線>

全体最適で考えれば、コストが下がるのは明らか。それをどうやって按分するのか?は非常に難しい。目標は放っておけば勝手に現場が共同配送(互いに競合する相手同士)を増やしてくれる方向に進む様にうまく自社利益を設定することだ。

例1)競合する物流会社A社・B社が共同配送する。自車で考える。
1-A)閑散期:自車
自車は固定費だから、お互いに最大限活用したいので上手く行きそう?本当に?共同配送を促進するには普通の方法よりも共同配送の方が利益が上がる設定にする。閑散期は仕事が無いので、AB社どちらか一方の自車で充分だ。
仮にA社が共同配送して、通常の1.2倍の運賃で走るとする。
B社は協力したんだから走ってないけど、やはり通常の1.2倍の運賃…
あれ?コストが上がる…
B社の自車は協力すると運賃が貰えない。補填しようとすると、1台しか走ってないんだから財源が無い…
逆に他の仕事をやっちゃうと、A社は怒る。その分の利益寄こせよって。。。
👉破綻する(閑散期は1-B:庸車でないと機能しないと分かる。しかし閑散期に共同配送?進まないだろうなぁ)

2-A)繁忙期:自車でも庸車でも
繁忙は車が足りないので必ず庸車も必要になり、互いの車両融通は別の問題なので関係ない。すると、なるべく積載率を上げる方向に向かう事になる。積載率を上げると積載重量が増える… ここで問題。A社、B社の運賃は重量に比例する?しない?社内の運賃設定がお互いに一致してれいば良いが、そうでない場合は事前に共同配送運賃を協議する事になるのだろう。

まとめてみると、計算は面倒くさそうだがなんとかなりそうだと分かる。
(ここにはゲーム理論のナッシュ均衡が存在するが、解決可能?)

自車で重量比例:なるべく多く積みたい
自車で台数制 :なるべく多く積みたい
庸車で重量比例:なるべく多く積みたい
庸車で台数制 :なるべく多く積みたい

いや、解決しないな。積載率を上げようとすると多箇所で混載率を上げることになる。多箇所を回ると車両回転率が落ちる。車両回転率が落ちると車両は増える。車両が増えると運賃は上がる。破綻するわ…

すると、皆が中間デポに荷物を集める事になる。すると、やはり中間デポでのスケジューリング問題が浮上してくるな…


むしろ繁忙期の問題は… また現場目線に戻ってしまうが…
積載率を上げるという事は、複数拠点を回って積み込む事になり配送計画が狂いやすい。只でさえ繁忙期は遅延しがちなのに、こうすると余計に遅延リスクが上がる。現場はこれに対応できるだろうか?

まとめると、繁忙期では矛盾は出なさそうだが閑散期には矛盾が生じる。
 1)利益面では共同配送が成り立つのは繁忙期のみ。
 2)現場は繁忙期に共同配送するのを嫌う。
理屈では機能しそうだが、運用が難しそうだと分かる。
製造業界によっては繁忙期は1年のうちに数10%程度の所もあって、これも悩ましい。コンスタントに荷両が一定している事業での適用が望ましいか。


<車両目線>

拠点間の荷量が常に満載状態ならば、共同配送は成立しない。
例)
拠点A,B → 拠点C,Dでは常に16PLの荷物が行き交っているとすると、10t車満載状態なので何も変えられない。変に中継地点で積み替えをする方が無駄になる。直送が最も安い

共同配送をしようとすると、結局は似た種類の荷物を扱う事が多い。
パンと石油は一緒には運べない。
すると、似た業種となり繁忙期は同じ時期に被る。
繁忙期がズレあっていると上記の矛盾が解決出来るのだが、これがなかなか難しい。


ここでまた利益目線に戻ってしまうのだが(考えながら書いているので…)
繁忙と閑散がズレあっていれば、繁忙側は閑散側から車両融通して欲しい。
これは明らかに成り立つ!これは良さそう。
そうすると、問題はやはりひとつ。


冒頭の結論に戻る。


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